適当女は性悪姫を笑わせたい

作者 烏目浩輔

177

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★★★ Excellent!!!

読み手の網膜を焼くのは黒と赤だけで塗り潰された絵。その絵の主は、ありのままで接してくれる「友」を得て変わる。ネタバレになるのでこれ以上は書けませんが、ちょっと特殊な環境、生い立ちにおかれた少女の小さな成長ストーリーです。あなたの心に絵の具はありませんか? 最後まで読めば、少量なら心のキャンバスに消せるかも知れません。どんな色でも。お薦めです。

★★★ Excellent!!!

読後すぐに良い言葉が思い浮かばない、そのくらい素晴らしい作品でした。
重たい内容が話の筋にありますが、それをあまり重たく感じさせない主人公の性格も魅力的。

暗い背景を背負った少女と、その少女と話をするもう一人のごく普通の少女。
彼女達の話は他愛もないことです。だらだらっと。
でも二人の関係は、
友達という存在がどんなものか、改めて認識させてくれます。

すぐに読めます。おすすめです。

★★★ Excellent!!!

質の高いショートフィルムを見ているような感覚になる、これはそんな小説です。
のらりくらりと自由に生きている「フウ」と、赤と黒の絵を描きながら何かに怒っている「黒姫」の、軽やかそうで実は濃密な心の交流を描いた、女の子の友情物語。

いや、「友情」というのも適切ではないのかも知れません。友情とは少し違うけれど、でも「心の繋がり」を描いた傑作です。

正直、この小説を説明するのは難しいです。でも、読んで欲しい。読み終わったあと、きっとこう思うはずですよ。

──あぁ、良いお話だったなぁ。

★★★ Excellent!!!

風花さんは黒姫さんを笑わせたい。
言ってしまえばそれだけなのですが、どうして彼女を笑わせたいのか、ひいてはなぜ彼女は笑わないのかと言うところにフォーカスが当たっていき、二人のやり取りに引き込まれて行きます。
そして同時に、それに対する世間の動きと風花さんの動きが合わなくなります。
多分お互いがお互いを思い、お互いに対してやさしいだけなのに、それなのに世間の風向きのせいで、本質は歪にねじれていって……。

この作品に登場するラッキーチョコ。毎日食べてもハッピー、ときどき食べてもハッピー。
このチョコレートが、とても素晴らしいガジェットになっています。チョコレートは歯車と噛み合い、あらゆる装置に働きかけ、人生そのものを大きく動かします。
他人から見れば、それは小さな揺らぎのようなものかも知れません。しかし、私には世界を揺るがすほどの、力があったのではないかと思わずにはいられませんでした。

読後感、素晴らしかったです。
心のモヤモヤが取り払われるかのような、清々しい気持ちになりました。

★★★ Excellent!!!

周りから避けられている女子高生と、ふとしたきっかけで仲良くなる『適当』な女子高生のお話。

女子高生たちの心の機微と青春を丁寧な筆致で描きつつ、それでいてシリアスな設定もあり、軽妙な会話もあり、救いもある短編。

読後感のよい秀逸な作品だと思います。

★★★ Excellent!!!

まったく異なる生い立ちを持つ二人の少女が、ひとつのチョコレートを巡って人生に重なりを見つけるような、何処にでもありそうで、だからこそかけがえのない、輝く友情を垣間見た気持ちです。
こういう友情の形、怒りへの折り合いのつけかた、素敵です。

何の問題も無く生きている。
そのように見える人ばかり。
内面には各々の事情があるけれど、
そんなことを深刻に語らなくていい。

気軽に味わえるチョコレートに、長続きの秘訣があるのかもしれません。
味わい深い一万字でした。皆様も是非、どうぞ。

★★★ Excellent!!!

周囲にあまり興味を抱かない語り手。
けれど、高校生の頃、一人の女子生徒に関心を持ち、自ら声をかけるようになります。
彼女は、ある理由によって周りから避けられていました。

語り手の言葉には、この感覚分かる、と思える箇所が非常に多く、この年頃の女子の感性、周りとの関係性がとても良く表現されていたように思います。
興味が無い、けれど多少は興味があるように振舞っておかないといけない。
多かれ少なかれ集団生活の中で感じ得る倦怠感と打算的な人との関わり方がリアルで、だからこそ、そういう張り詰め方から解放される「黒姫」との間にある気楽さがよく分かります。
個人的な感想ですが、私自身がそういう「面倒くささ」を常に感じてしまう質なので、語り手の感じ方には非常に共感しました。

二人の間の、ベタベタしてはいないのに唯一無二である繋がり。
そこへ、面倒くさい周りの人間の面倒くさい目が注がれてしまう面倒くさい展開。
語り手の嫌気がよく伝わってきました。

見どころは、やはり最終話でしょう。
シンプルなメッセージには、けれど飾り立てられた言葉どれよりも真摯な思いが込められていて、語り手の心へまっすぐ届いたことが分かります。
届いたそれを打ち返すような返事も、また、ずっと言いたくて言いたくて仕方がなかった思いだったのだろうなと感じられます。
衒ったところのない、外連もない、言葉のやり取りは、上辺だけでの付き合いが溢れている環境の中で、とても気持ち良く響きました。

作品を読んでから改めてタイトルを見ると、なんというか、本当に笑わせたいんだな、と思えて、それもまた味わい深いものでした。

★★★ Excellent!!!

主人公の『適当女』こと風香は、周りに合わせるのは上手いけど、実は他人にとことん興味がない。
一方の『性悪女』こと黒姫は、父親が殺人犯だったせいで平凡とは程遠い、後ろ暗い人生を送っていた。
そんな二人の『平凡な』友情を描いたお話です。

テンポの良い会話の応酬が心地よいです。
風香と黒姫の関係性はもちろんのこと、その周囲を取り巻く人間関係がとてもリアルでした。

物語中では何か劇的な事件が起きるわけではなく、淡々と日常が過ぎていく。
ちょっとした行き違いで黒姫との関係が途切れかけた末の卒業式、日々適当に過ごしていた風香の心の揺れ動きにカタルシスがありました。

『平凡な人生』も、全然悪くない。
ありきたりな幸せだって、あたりまえにあるものじゃない。
卒業後、『平凡』になってしまった黒姫の人生に、胸の奥がじんわり温まりました。

毎日食べてもハッピー、ときどき食べてもハッピー。
そんなキャッチコピーの入った『ラッキーチョコ』というお菓子が、まさに二人の友人関係を象徴するアイテムでした。
すごく好きなお話です!