上辺を整えることばかりの高校生活の中、唯一、素の自分でいられた相手

周囲にあまり興味を抱かない語り手。
けれど、高校生の頃、一人の女子生徒に関心を持ち、自ら声をかけるようになります。
彼女は、ある理由によって周りから避けられていました。

語り手の言葉には、この感覚分かる、と思える箇所が非常に多く、この年頃の女子の感性、周りとの関係性がとても良く表現されていたように思います。
興味が無い、けれど多少は興味があるように振舞っておかないといけない。
多かれ少なかれ集団生活の中で感じ得る倦怠感と打算的な人との関わり方がリアルで、だからこそ、そういう張り詰め方から解放される「黒姫」との間にある気楽さがよく分かります。
個人的な感想ですが、私自身がそういう「面倒くささ」を常に感じてしまう質なので、語り手の感じ方には非常に共感しました。

二人の間の、ベタベタしてはいないのに唯一無二である繋がり。
そこへ、面倒くさい周りの人間の面倒くさい目が注がれてしまう面倒くさい展開。
語り手の嫌気がよく伝わってきました。

見どころは、やはり最終話でしょう。
シンプルなメッセージには、けれど飾り立てられた言葉のどれよりも真摯な思いが込められていて、語り手の心へまっすぐ届いたことが分かります。
届いたそれを打ち返すような返事も、また、ずっと言いたくて言いたくて仕方がなかった思いだったのだろうなと感じられます。
衒ったところのない、外連もない、言葉のやり取りは、上辺だけでの付き合いが溢れている環境の中で、とても気持ち良く響きました。

作品を読んでから改めてタイトルを見ると、なんというか、本当に笑わせたいんだな、と思えて、それもまた味わい深いものでした。

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