6. クマヌクスヒ

 ――いずれ、この地上は“私たち”のものとなるのです。

 そのため、貴方はこの時代によみがえった。そうでしょう、クスヒ。


 あの娘は畢竟そのためのニエでしかない。それを心の底で貴方は愛している……実に嘆かわしいことです。やはり貴方は姉上の息子なのですね。そして同時に兄上、スサノオの実子でもある。私はそんな貴方がとても眩しい。光と闇、愛と力とを同時に兼ね備えた唯一無二の存在。だからこそ。


 傍らで眠る聡介。ツクヨミの霊力で結び合わされた力。それが一定時間の後尽きると、今度は依代よりしろであるヴェルトーチェカが目覚める。彼女はその昔、ベアトリーチェと呼ばれ重宝されていた存在だった。何に? ふふ、知れたこと。私たちのような、負の魂を持つ者たちに、ですよ。


 聡介ですら、その感情に逆らえなかった。そのマイナスの磁極に気付いた瞬間、彼は愛するものの存在に気付き、そしてそれを力づくで奪う己自身の裡の力に気付いた。だからこそ私は、こうしてこの世に顕現することができた。そうクスヒ、貴方を追って。


「でもまだ、そのヒルコに触れることは叶わぬのかもしれません……」

 何かが不完全のままなのか、そして、もう少しだけ時間が必要なのかどうか。――いや、むしろ。本当の意味で龍蛇の巫女の力を取り込まなければ、というより……。


 ツクヨミは月を読む。それはすなわち、世界と未来の行く末を闇の時間で推し量ること。その私の心眼が伝えている。あの少女自身が、クスヒ自身を受け入れねば。――なんという因果な役割さだめか。


「ふっまさか、ね……クスヒ、ただ私は貴方を手に入れたいだけ」


 本当の勾玉たまのありか。“それ”が宿らねば、その秘宝ですら、ただの石塊でしかない。ヒルコ。我らが始祖イザナギとイザナミとが闇に葬った哀しみ。兄妹きょうだい神であることの禁忌の交わり。たとえそれが確かな実を結んでも同じことでしょう。アマテラスとスサノオですら、そうだった。彼らから生まれた貴方。そして、貴方とその巫女も。


 ――禁忌の鬼神クマヌクスヒ。何と甘美な響き。

 すべてが予定調和……けれど世は、それではつまらぬもの。だから、貴方のようなイレギュラーが必要なのです。真の調和とは元来そうしたもの。そして、いずれは貴方の巫女も――。


 永遠に月が照らしているような、そんな幻の宮でツクヨミは人知れず怜悧に微笑んだ。


     *



 …………

 ……………………


『日が月に飲み込まれし夏至の夜、運命の皇子みこが産まれます……』


 ――それはまことか、ツクヨミ。

 我が心眼ひとみに曇りなきことが真実であれば……。


 我が姉君にして、この国を統べる全知全能の日巫女アマテラスと、その弟、軍神スサノオの子。その使命のまま、偽りなき宣託を包み隠さず述べること。それはそのまま、我が身の危うしを示していた。事実私は、その日から陽の光の差さぬ牢獄へと囚われた。だが元より闇夜を照らし、その月の暦で全てを占うのが私の役目。たとえこの身が何処に幽閉されようと違いはないでしょう。そう、貴方に出会うまでは……。


 ――『貴方は誰?』

『私……? ツクヨミ……貴方のまこと愛人まなびととなる者』


 美しく成長した貴方に出逢ってから、私の心は変わった。

 ああ、クスヒ。憂いを含んだ月の光は、それを照らす太陽の眩しさのなせる技なのだと。ならば。


 クスヒ、クマヌクスヒノミコト。祖が母君アマテラスノミコトの真の罪深きを御知りか……。私は歳を取らない。幼い少年だった貴方は美しい青年となり、歳の離れた幼馴染として知り合った私たちは、いつしか互いに愛し合うようになった。そう、それは昼と夜とを隔てた秘められた想い。


 ――そして。


 あの日食の日。祖国アマテラスの女帝は、その愛する皇子の手にかかった。唯一人この世から隔絶させられ、日神の子としての証である称号も与えられず、秘されし皇子として文字通り隠されしクマヌクスヒ。だがそんなことが理由ではなかった。


 母アマテラスの輝きと父スサノオの猛々しさを同時に兼ね備えた運命の日皇子。私は“真実”を貴方に教えただけなのです……。


 そして私たちはスサノオの追撃の手を逃れ、共にこの地上を去った。だのに――。


 貴方はなぜ、いずこかに囚われてしまったのですか。私の心眼でさえ届かぬ真の闇に。ただ再び蘇るその日を今や遅しと待ち続け早幾年。その間に地上はすっかり変わり果ててしてしまった、いや。とうにアマテラスは、まほろばの幻の国へと化した。


 だが……。


 貴方こそが、かのアマテラスを凌ぐ、いや、昼と夜とを兼ね備え従えた、真の覇王となるのです。それこそが我が本懐。だからこそ運命の日食が起き、女帝アマテラスは身罷った。何より貴方自身の手により。貴方の苦しみも哀しみも、すべてを私が共に預かると誓った、この心に偽りはない。そして何より貴方は強い。なのに、何を躊躇う。何を怖れる――。


「……クスヒ」

 私のあずかり知らぬ、もう一つの世界で貴方は――。


 ……あの巫女むすめと出逢っていた。同時に存在する二つの世界。この私でさえ、そのような妹巫女の存在が在るなどと。いや、


 おそらくアレは。この世を映した鏡の向こうの世界、あちら側からの。

 そう――そしてそれは、イザナミの呪い。


     *


 あの方と出会ったのは、私が近衛隊の準剣士として皇宮に配された翌日だった。


 日神アマテラスとその腹心スサノオの皇子。しかし、その存在そのものが秘匿され、表向きはツクヨミの養子として宮で養われた、私はその方の護衛を任されたのだ。


 凛として常に何者をも寄せ付けず、しかし神々しい輝きを身に纏ったその御姿。艶やかな黒髪、そして漆黒の闇を映し同時に不可思議な光を宿した紫水晶の眸。何もかもが不思議に満たされた隠されし御皇子。


「クマヌクスヒ……我が名の真の由来を知っているか?」


 そう、その通りだ。隠されし光。……そして闇から生まれし真の光。だからこそ母上と父上は、私を畏れたのかもしれぬ。軟禁も同然の日々。生まれた瞬間ときから忌むべき存在として、偽りの肩書きで育てられた。何もかも、来し方行く末それ自体の奪われた生。そう私に未来などないのだ。


 ――そんな私に仕えることとなった己の運命を呪うがいい。


 ああ、そうか。だから私は……元々私の家柄は低く、だがしかし女だてらに己の実力のみで伸し上がり、しかも皇族ばかりでなく常に下々の民をも分け隔てなく手厚く扱い助けた私を快く思わぬ者達の差し金か。けれど。これは、まさしく「運命」だったのだ。


 私はかの人に仕えることとなった、その命を呪うことも嘆くこともなかった。かの人自身が言うような思いをしたことは一度もなかった。それどころか。真にその気高く、そして美しいかの人の魂に次第に惹かれていった。いや、決してそんな浮ついた気持ちではない。


 いつしか漆黒の闇に飲まれていきそうな、だのにその寸前で己自身を忍し留めているような危うさ。そして何よりその隠されし奇しき輝きは、見る者全てを引き付けた。私には、かの人が己自身の生まれを呪っているようには、とても思えなかった。それどころか、真の己自身の光を心から求め信じている。その確信から来る自信。そしてその隠し切れぬ眩しい磁力が、かの生まれのまことの気高さ神々しさを物語っていた。


 ……だから私は時折、己自身を蔑むように嗤うあの方が哀しかった。

――そして、怖ろしい。


 クロエは思った。なぜアグニの体内にあの方の分身が巣食ってしまったのか。


 無論、それを強要したのはガイアの連中だ。彼は単なる実験材料にされただけのことだ。が、それ以上の引力が二人の間に働いたような気がしてならなかった。その血を受け継ぐものとして、双方が同時に引き付けあった。単にあの場にアグニが居合わせたのは偶然なのか、それとも。いや……そうだ。元はといえば、私が言い出したのだ。彼をそそのかし扇動した。その心が求めるものがどこにあるのかも知っていた。それは私だ。


 だからこそ私が動かねば。例え血にまみれた運命に飲み込まれて行こうとも、私は私の主人とともにあらねば。そしてアグニも。もし、かの人と彼が同じ宿命を背負うのなら、私は常にその双方の向かうべき魂の真のありかを、この目でしかと見つめていかねば。


 ――私がアグニとともに在ることは、あの方とともに在ること。


 しかし、アグニはその為の仮の我が拠り所ではない。私は同時にどちらのこころをも見つめている。そう、独立した二つの魂として。


 ……それはおそらく、闇そのものの真実を見つめることになるのかもしれない。

 クロエは、改めて龍蛇の皇子としての、かの人の真実を思った。


     *


「コモドドラゴンって知ってるかい?」


 別名コモドオオトカゲ。まさに絶滅した恐竜そのもの、世界最大のトカゲで生きた化石とも言われている。そいつが単為生殖ってやつをやってのけたのさ。要するに処女懐胎。大型爬虫類では、初の快挙ってわけだ。雄と雌による生殖行為に頼らず、雌だけで身篭った。交尾なしで子を産むなんて、生としての喜びを知らずに可哀想に、ははっそんなわけもないか、と笑う島嶺を他所に、デュナンは一つの水槽に目を凝らした。


「こいつの鋭い牙には毒があり、噛み付いた獲物の血液の凝固を妨げ、失血によるショック状態を引き起こす――」


 そんな物騒なオオトカゲだ、まさしく生きた化石のまま、おとなしくしてて欲しいもんだがな。そう呟く島嶺は、デュナンが目にしていた小振りの水槽を忌々しげに顎でしゃくった。その中には、今にも殻を割って出てきそうな卵が複数眠っていた。


「この卵って孵らないんですか?」


 リリアンの呈した素朴な疑問に、ああ、そいつは標本だからな。素っ気無く返って来た返事に、当たり前だと思いつつ、何だか可哀想な気もして彼女は再びその卵を見つめた。コモドドラゴンといえば、絶滅危惧種。それでも、こんな所に孵らない卵が保存されている。これもかつての天変地異のなせるわざなのか。それでも生命は、確実に子孫を残そうとしている。例え雌だけになっても単体で子供を産もうとするなんて、なんて強いんだろう。


 何だかレプリティアン、先程の爬虫類人の話もあながち嘘でない気がしてきた。


 ――そういえば、コモドドラゴンの生息地であった、かつてのインドネシアのコモド島には、こんな言い伝えが二種類あるそうだ。島嶺の言葉に二人とも振り返った。


 ある王女が生んだ双子の兄妹きょうだいがいた。兄は人間だが、その妹はオオトカゲだった。あるいは別の話では、兄の子供がオオトカゲで、妹の子供が人間。その二人を結婚させようという話。どちらにしても、人と爬虫類の交接を嫌でも思わせる。だから現地の人々はコモドドラゴンに襲われても、絶対に故意に傷つけたりしないのだそうだ。我々は彼らの兄弟だからだと。そういえばインドネシア含め東南アジアには、兄妹きょうだい神の神話が数多く存在した。それは、このイザナギ――日本も同じだ。


「なんで人間はこうも近親相姦とか蛇神とか、そういうことばかり考えるんだろうな」

 いや、ばかり、とは限らないが。デュナンはそう思いつつも、自らの正体について深く考え及ばずにはいられなかった。というか、こいつ、やっぱり多少は勘づいているのか。


「その方が強い血を維持できるからじゃないか? もっとも近親相姦がそうとは限らないが」

 デュナンの言葉に、改めて蛇やトカゲの生命力の強さを思い返す。せめて神話の世界だけでも、人は兄と妹が結ばれ、その濃い血脈が永遠にこの大地に栄えることを願ったのか。


 ――どうでもいいが、そう切り出したデュナンに島嶺は思い出したように、ああ、すまん。そしてもったいぶったように念を押した。


「要するに今から見せるコイツは、俺の大事な研究材料だ。天照大付属高校の学生だからって、そうそう拝めるもんじゃない。だから絶対に見たことも聞いた事も他人には言うなよ」


 いいだろう。唐突にデュナンの態度が変わったような気がして、心なしか島嶺は自分が怯えているような気がした。


 ……そういえば、あのテロリストの海賊、一体どうなったんだろうな。


 歩を進めながら、さりげなく話題を変える。島嶺自身も、さすがにその詳細は知らなかった。ただ、心に深く引っ掛かっているのは、当然身柄を拘束後、すぐにガイア本国に連行されてもおかしくないはずが、その後の詳細が一切ニュース報道されることがなかったことだ。あれほど世界的に世間を脅かしていた海賊テロリストが。なあ、おかしいと思わなくはないか。


 デュナン自身も、そいつがどうなったのかなどということは、それほど意に介さなかったのだが、その海賊の首領が、まさかその後、太陽神である自身とともに行動を共にし、互いに強く相手を必要とすることになろうとは思いも寄らなかった。


 カグツチ……。


     *


 本当にルミナスは何も知らないんだろうか。

 何がって? ほら、“あの人”のこと。あたしは、ついこの間再会したばかりの例の女剣士のことを思い出していた。あの人はルミナスのことをよく知っているようだった。それも、随分昔から。あの人……やっぱり彼女も神人?


 そう思い、懐にしまっていた翡翠で作られた勾玉のペンダントを取り出した。これって、やっぱり――。

「はぁ……」


 本当にルミナスは知らないの。これをあたしが彼女から貰い受けたこと。既に一心同体となっていた、あたしたち。その当人のルミナスがあたしの身に起こったことを何一つ知らないわけがない。それなのに、これについて、それに彼女のことについて、特に彼から何がしか問いただされてもいない。


 何だか、どこかであたしたちの間に……見えない壁が張り巡らされているような。だがしかし、実際そんなわけがなかった。常にあたしたちは二人で一人だった。ただ、何かの瞬間に、まるで故意に何かの意思が働いているかのように、あたしたちは互いに見えない秘密を双方で抱えた。


 ――コレの力ってことなのかな、つまり。


 でもルミナス自身も、彼自身の出自についてはっきりしたことを、まだあたしに何も告げてくれていない。勿論それは、まだ完全に記憶が戻ってないからとも考えられるけど。例のツクヨミの一件があってそれでもなお、何も思い出せていないとは言えない。


 きっとあの人が言っていたように、この石には何かの力があるのかもしれない。けれど、それだけとも思えない。ルミナスは、やっぱり何か隠している? それとも……。


 まるでイオリゲルが持っている“フィルタリング機能”のようだ、と思った。知りたくないことは知らなくてよい。そして、知られたくないことは――一切相手に読み取らせない。その障壁のような心の壁。でもきっと、それが普通なんだ。


 今みたいに、時々呼んでも答えがないことが度々ある。どうして? あたしたちは文字通り一心同体になったはずでしょ。それなのに……あの誓約の儀式は何だったんだろう。本当はその方がいいはずなのに、本当なら逃げ出したいはずなのに――不思議とあたしにはそれができなかった。それは逃げ出したいと思っても、どうせ逃げられないからと知っているからとも言えるけど、もし仮に彼から逃れられるのだとしても、きっとあたしは。


 瑠美那としての肉体で目覚めている間、殊にそれが顕著だった。むしろあたし自身が眠っている間、デュナンとして覚醒している時の方がルミナスと確実に繋がっていた。それでも……このところ、あたし自身も黙っていることが多かった。それだけルミナス自身の力が強まってきているのかもしれないけど、本来の眠って目を瞑っている状態が頻繁に続いていた。というか、そう。何だかすごく怖い。目を開いて本当のことを知るのが怖い。それは、父さんのこと含めて。


 この勾玉の力に、そしてあたし自身に何ができるのか、本当のところは何も分からない。でも、本当はもっと知りたい。ルミナス、あなたのことが。純粋な気持ちとしては、そうだった。それに何がどうなろうと結局のところ、そうすることでしか、何も解決しないし進まない。多分きっとそんな気がした。


 そう、たぶん、あたし自身がどうなろうと……金城瑠美那は金城瑠美那、でも。

その鍾乳洞の薄闇の中の告白で、あたしはあたし自身の「恋のライバル」を失った――。


     *


 「……委員長、俺と付き合わないか?」


 暗闇の中、いきなりデュナンから小声でそう告げられ、不意にリリアンは目の前を行く背中を改めて視つめた。ここに来る前に同じようなことを言われた気がするけど、今度のは……何だか真剣な色合いを含んでいるその声のトーンに思わず息を詰める。


「あの、デュナン、それって――」


 何となくプロポーズみたい。だけど自分で思ってみても、あまりに乙女チックな発想すぎる。またヴェルに呆れられちゃうな。そんなリリアンの内心を他所に、デュナンは至極真剣だった。というより、当然彼には彼の思惑があったのだが。


 地下書庫はそのまま得体の知れない鍾乳洞に繋がっていた。その奥へ奥へと無言で進んでいく島嶺。目の前を照らすサーチライトの明かりだけが頼りだ。何となくだが、生温かい蛇の腹の中を進んでいるような錯覚に陥る。それでも、ひんやりとした空気の感触が、時折聞こえるチャポンという水音によって、さらに冷気を増す。


 わ、私……。


 自分でも動揺しているのがよく分かった。それでも思ってもみなかったデュナンのその申し出は、心臓の鼓動を高鳴らせ、否応なしに心を惑わせた。本当に、本当? 思わず声に出して尋ねてみたくなる。嬉しい、純粋にそう思うには、このシチュエーションはあまりに……。確かにいわゆる、お化け屋敷やジェットコースター心理に似てるけど。つまり怖いと感じる状況下でなら、男の子は女の子を自然に誘えるし、女の子は男の子の告白を容易に受け入れられる。それなら……。


「何言ってるの、デュナン」


 しかし、思ってもみなかった言葉が口から飛び出して、自分でも軽く失望する。いや、本当の意味で意外に思ったのは、当のデュナンの方だった。その声色にはよこしまな誘惑を跳ね除ける凛とした強さがあった。リリアンの意外な反応にデュナンの中の日神は口元を歪ませる。


 あれだけ自分に気があると思っていた人間の女。人間など所詮弱いもの。そう思っていたからこそ、彼女を誘惑しようとした。それが……。何となく“お前”に似ているな。え? 瑠美那とは似ても似つかぬ学園のお嬢様だとは思っていたが。


 瑠美那の気を元に融合したこの身体で、瑠美那ではない別の女を誘惑しようとしている。その本意ではない誘いに気付かれたのか。そんな素振りも強さも見せない、目の前のこの華奢な腕を抱き寄せ、思わず自分のものにしてみたくなる。


 ルミナス……――。


 思わず凶暴な力が満ちるのを感じ、恐怖に支配されそうになる。愛憎という名の情念に縛られ、ばらばらにされるのは自分だけでいい。もう誰も傷つけないで。何度そう叫んだことか。そう……本当の意味で愛し愛され殺されるのは、あたしだけでいい。


 

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