第62話:ケニア土産

 宴では俺が手土産に持ってきた鮭のルイベも皆に振る舞われた。

 凍った食べ物に馴染みのないライオンたちは、不思議そうに匂いを嗅いだあと、パクリと食べて半解凍の魚肉の冷たさに目を丸くしている。


「おぉ、これはいいね。口の中から涼しくなるよ」


 ルイベを食べ終えたシンバ様が満足そうに笑う。

 これがきっかけで、ケニアでもフォースを使って肉や魚を凍らせる技術が広まった。

 氷結のフォースはエルザ姫のワニ戦をフォローした際にも使ったけど、お城の中庭で実演したらみんな大喜びしていたよ。


「この保冷容器の開発者はハチロウというのですが、こちらも技術提供してもよいそうですよ」

「それは嬉しいね。開発者どのにヌーを土産に届けてくれ」


 ケニア土産はヌー肉になった。

 ローズマリーもくれたから、帰ったらローストして研究所の皆に御馳走しよう。

 岩塩も貰ったけど、これは俺専用だな。



 宴が終わり、土産のヌー肉をたくさん貰ってほくほくしながら研究所へ帰る俺。

 行きは知らない場所だからワープゲートの世話になったけど、帰りはフォースを使って自力で移動できた。


「あ! タマおかえり~!」


 俺の部屋で待っていたのはミカエル。

 ベランダ菜園を手伝いに来ているハチロウもいた。


「ただいま~、お土産もらってきたよ」

「わぁい!」


 ミカエルは肉の土産に飛び跳ねて喜ぶ。

 ヌー肉は鮮度を保つために、凍らせて保存容器に入れて持ち帰っている。


「ハチロウ、これも貰ったけど猫たちも食べられるものかな?」


 俺はもうひとつの土産、ローズマリーをハチロウに調べてもらった。

 同じネコ科のライオンたちが好むから猫たちも好きかと思ったけど、どうやら違うようだ。


「これは柑橘系と同じで、菜園の猫よけに使える植物だね。僕は平気だけど、この強い香りが苦手な者が多い筈だよ」

「ボクはこの香り好き~」


 ハチロウ曰く、猫にとって成分としては無害な部類だけど、好むか好まないかの差が大きいものらしい。

 バーベQに使うのはやめておこう。

 ミカエルが好む香りで良かった。

 ローズマリーは部屋のキッチンに保管して、俺とミカエルが食べる肉の味付けに使うことにするよ。

 菜園に植えるのもありだな。



【ローズマリー】

 シソ科に属する常緑性低木。

 生葉または乾燥葉を香辛料や薬として用いる。

 甘く爽やかな芳香は肉料理との相性がよく、香り付けや臭み消しに使われる。

 抗酸化作用のあるポリフェノールを含む。

 消化促進・殺菌・強壮効果・美肌効果があり、【若返りのハーブ】とも呼ばれる。

 古代から薬用に用いられ、記憶力を高める効果があるとも言われた。

 葉の他に花も食用可能。

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