第48話:お土産

「このお肉は、モリオン博士たちへのお土産にどうぞ。ジル陛下にもお裾分けしてあげてね」


 ピカリャー王国からの帰り際、俺はマーヤ女王様からイノシシ肉を大量に貰った。

 背負えるようにリュック付きだ。

 美味しいお肉だから、きっとみんな大喜びするだろう。

 キングサイズな王様はいっぱい食べそうだからか、お裾分けも多かった。


「では私はタマを研究所まで送るよ」

「知っている場所だから自分で帰れるよ?」

「つれないことを言わないでくれよ。名残を惜しみたいんだ」

「あ~っ! ズルイ! 私も行く!」


 マーレー王子が見送りと称して俺の腕の中に納まったら、クーラ王女まで飛び込んできた。

 双子らしいけど、未熟児のクーラ王女はマーレー王子の半分にも満たないチビッコだから、2匹セット抱っこもそんなに重くはない。


 って思っていたら……


「じゃあ、私も行こうかしら」

「え? マーヤ様も?!」


 ……マーヤ様まで飛び込んできたよ。


 しかも、息子を踏んでるし。

 よくあることなのか、マーレー王子は平然としている。


「では、護衛の我々も」

「はいはい、もうみんなまとめて行こう」


 護衛のみなさんまで言い出すから、俺はまた床に座って猫まみれだ。

 来た時より2匹追加、背負ったリュックの重量もプラスされている。

 足が痺れる前に、自分のフォースで研究所へ転移しよう。



「おかえり~」

「おやおや、賑やかだねぇ」


 研究所の談話室へ転移したら、休憩中のみんながいた。

 イリオモテヤマネコまみれの俺を見ても、誰も驚かない。

 到着してすぐ、護衛のみなさんはサッと降りて俺の周囲の床でオスワリ待機した。

 ちょうどいいから、ここで土産を渡そう。


「ただいま。お土産もらってきたよ」

「肉の予感がするぞ」

「お! もしかしてイノシシか?!」

「正解。凄く美味しかったよ」

「やったぁ!」 

「ピカリャー王国万歳!」


 俺は抱っこしていた3匹の王族を膝の上に乗せて、背負ってきたリュックを床に置いた。

 すぐに目を輝かせてテンション上がるのは、食いしん坊のミノルとアババ。

 メタボな巨体で、踊りながら喜んでいるぞ。


「リュックに保存のフォースをかけてあるから、鮮度は維持されているわ」

「「「ありがとうございます!」」」


 俺の膝の上に乗ったまま、マーヤ様が微笑む。

 ミノルとアババを含めた研究チーム一同が、背筋ピンッ!とさせて(猫背どこいった?)お礼を言った。


「マーヤ陛下、クーラ殿下、毛ヅヤがよくなられましたね」

「お体の調子はいかがですか?」

「ええ。もう健康そのものよ」

「タマのおかげで快癒したわ」


 モリオン博士は、女性王族たちの体調の変化に気付いて言う。

 薬師でもあるハチロウ博士が問いかけると、マーヤ様もクーラ様もニッコリ笑って完治を告げた。



 以来、ピカリャー王国で大物のイノシシが獲れると、俺にもお裾分けが届くようになった。

 というか、お裾分けを理由に、王族御一行様が俺に会いに来るんだけど。

 研究チーム曰く「タマの抱っこはメイピスカリャー王家御用達」だそうで。

 たまに俺の部屋に泊まってベッドで一緒に寝てたりするけど、王族それでいいのか?


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