第44話:ヤママヤー族

「凄く今更だけど紹介しよう、彼の呼び名はタマ、この遺跡の中で二千年間眠っていた人間だよ」


 モリオン博士が今更ながら俺を紹介した。

 けど、みんな聞いているんだかいないんだか。

 ピカリャー王国の王子様、マヤー王国の王様を抱っこした後、俺はイリオモテヤマネコに群がられた。

 王様曰く、イリオモテヤマネコたちは「ヤママヤー」という種族らしい。


「お前たちもタマのフォースに触れてみろ。こんなに温かくて心地良いのは初めてだ」


 なんてマーレー王子が言うから。

 護衛たちが興味津々で俺の周囲に集まってくる。

 俺は彼らが触れやすいように床で胡座をかいて座った。

 ちょっと考えた後、彼らは次々に乗っかってくる。

 膝の上は激戦区で、押し出されて床に転がる者もいた。

 もはや恒例になりつつある猫まみれだ。

 いつもと違うのは、群がっているのがイエネコではないことかな。

 イリオモテヤマネコと触れ合えるなんて、二千年前なら大ニュースだけど。


「ふむふむ、これが人間の温もりか」

「触れただけで疲れが癒えていくぞ」

「にゃんこネットワークで聞いた通りだ」

「遥か昔に絶滅した筈の人類と触れ合えるなんて、夢のようだね」

「後で子供たちに自慢しよう」



 今では、俺が珍しがられる生き物だ。

 二千年前は100頭くらいいたイリオモテヤマネコと、二千年後の今は1人しかいない人間とでは、珍しさレベルがかなり違うかもしれない。

 元絶滅危惧種たちが、俺の膝に乗ったり肩に乗ったり。

 腕の中に潜り込んでくる者までいるぞ(初対面で抱っこはよくないって誰が言った?)


「これも今更だけど、メーピスカリャー王家からタマに治療の依頼がきているよ」

「あ、それで【ご招待】なのか」

「行ってあげたらいいよ」

「じゃあ行ってくる」


 俺の保護者であるモリオン博士には、既に話は通っているようだ。

 彼が承諾するなら、俺はどこへでも行ける。

 依頼を引き受ける会話を聞いて、俺に群がっているイリオモテヤマネコあらためヤママヤーたちが丸い耳をピンと立てた。


「引き受けて下さるのですか?」

「うん。保護者の許可をもらったからね」

「「「ありがとうございます!」」」

「君なら引き受けてくれると思っていたよ」


 護衛たちが一斉に伏せて頭を下げる(所謂ゴメン寝ポーズ)。

 マーレー王子がヒラリと跳躍して、また俺の腕の中に納まった。


「よし、じゃあ早速行こうか」

「そしてやっぱり俺、乗り物か」


 再び、わらわらと乗っかってくるヤママヤー族のみなさん。

 総勢10匹ほどの重さは、30キロ超。

 俺の足が痺れる前に、連れて行ってくれ。

 彼らのフォースに運ばれて、俺は西表島へ向かった。



 

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