第43話:王子様と王様
「私の名前はマーレー。メーピスカリャー王家の第一王子だよ。今日は最後の人類と言われる君をピカリャー王国に招待しに来たんだ」
初対面でいきなり俺に抱っこされているイリオモテヤマネコは、ピカリャー王国の王子様らしい。
イリオモテヤマネコの国ということは、御招待されるのは西表島なんだろう。
同じ沖縄県だけど、俺が生まれ育った沖縄本島から西表島は400キロ以上離れた海の向こうなので、俺はまだ行ったことがない。
「それは光栄だけど、俺は猫たちに保護されている身だから、彼らに相談してからでないと行けないよ」
東洋のガラパゴスと呼ばれ、希少種や固有種の宝庫として知られる西表島。
行ってみたいけど、世話になっているモリオン博士たちに無断で行く気はない。
そう思っていたら、イリオモテヤマネコの群れの後ろから、よく知っている黒猫と初めて見る巨大猫が歩いてきた。
「なんだか騒がしいと思ったら、そっちにいたのか」
「ヤママヤーの一族も若い者はせっかちだねぇ」
と言う彼らの後ろから、遺跡調査チームやセバーズ兄妹も来た。
先に走ってきたイリオモテヤマネコ集団は、いきなり
「で、殿下、初対面の相手に抱っこされるのは、無防備が過ぎますぞ」
「大丈夫だ。この者のフォースは心地良く澄んでいるからな」
護衛メンバーの隊長ぽいイリオモテヤマネコが忠告してるけど、マーレーは全く降りる気はない感じで俺の腕の中で目を細めて寛いでいる。
「ほう、人間のフォースはそんなに心地良いのか。後ほど私も抱っこしてもらえるかい?」
ってニコニコしながら言う巨大猫さん。
人間の子供サイズだよ!
隣に来て二本足で立ち上がったら、頭が俺の腰に届くぞ。
「お望みとあらば。……ところで、どちら様?」
「私はジル。君が今住んでいるマヤー国の王だよ」
ミノルやアババみたいに肥満というわけじゃない。
骨格がデカイんだ。
オマケに長毛だから、更にデカく見えるよ。
『メインクーン系かしら? 大きいわね~』
『ケイトが飼ってた猫もフサフサしていたけど、こっちの方が格段に大きいね』
セバーズ兄妹の会話から、俺もギネス級の大猫を複数出している猫種を思い出した。
メインクーン(Maine Coon)
イエネコの中で特に大きく、「ジェントルジャイアント(穏やかな巨人)」と称される品種。
賢く遊び好きなことでも知られている長毛種。
ニューイングランド地方メイン州が原産とされておりメイン州公認の「州猫」に認定されている。
アメリカで最古、最大の品種。
メインクーンの耳は大きく、根元が幅広、頭の高い位置にあり、中にタフト(Tuft=房毛)が豊富に付き、先端にリンクスティップス(Lynx Tips=リンクスの耳先の飾り毛)がある。
「既に王子様を抱っこしてる俺が聞くのも何だけど、王族が初対面の相手に抱っこされてもいいの?」
「うむ、問題無い」
「君が我々に危害を加えるような者でないことは分かっているからね」
俺が聞いたら、隣に立つ王様と腕の中にいる王子様が答える。
では遠慮なく王様も抱っこしよう。
交代して俺の腕の中に納まり……切らない巨大猫は、体重10キロ超えてそうだ。
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