第40話:隠れていたもの

 実家の調査を終えた後、俺はふと人恋しくなり、OISTにいるケイトの霊に会いに行った。

 霊魂の保存研究はケイト1人じゃないと思うのだけど、ケイト以外の霊はまだ見かけたことがない。


「ねえケイト、聞いてもいい?」

『なあに?』

「ケイト以外に霊魂を保存した人はいないの?」

『いるわよ』


 どうやら、他にもいるらしい。

 ケイト含め霊魂の保存研究チームとは会ったことがないから、俺の知らない人だろうな。


「その人は、今どこに?」

『あなたの後ろにいるわよ』

「え?!」


 って、怪談かよ!


 そうそう、後から聞いたんだけど、ケイトが女子トイレでポウ博士を驚かせたのは、日本の「学校の怪談」ネタを真似たそうだよ。

 トイレの花子さんごっことか言ってたな。

 沖縄の学校には無いけど、内地では各地の学校にあるんだとか。


『むしろずっとあなたの傍にいたけど』

「えっ? いつから?」

『二千年前から』

「長いな!」


 振り返ってみたけど、姿は見えない。


 誰だろう? 

 俺が中学生の頃に死んだ祖母おばぁか?

 それとも、俺が小学生の頃に死んだ祖父おじぃか?

 仲良く消滅した両親が、実は成仏してないとか?


 あ、でも「霊魂の保存研究」に加わったのなら、おじぃ&おばぁは無いか。

 両親もそういうのには参加しなさそうだ。

 俺の家族が霊に関わるのは、ユタに相談するときくらいだ。


 ユタとは個人名ではなく、霊媒師シャーマンのこと。

 霊感や特殊な能力を使って、人々の悩みを解決したり、物事の判断をしたり、供養や除霊などを行う人たちの総称だ。


『ねえ、そろそろ姿を見せてあげたら?』


 何もいないように見える場所に向かって、ケイトの霊が呼びかける。

 すると、白い煙のようなものが空中に湧き出て、人の形に集まり、霊が姿を現した。

 本能的なものなのか、俺は一瞬ゾクッとして鳥肌が立った。

 同行している猫たちも、ビクッとして【やんのかポーズ】になる。

 猫たちにケイトの【声】は聞こえない。

 俺が声に出して言葉を返しているから、なんとなく内容は分かっているんだけど。

 たぶん、霊気を感じた時に無意識に出る反応なんだろうな。


『そっと見守っているつもりだったのに……』


 穏やかな【声】が俺の頭の中に流れ込んでくる。

【音】ではないのに、俺はその【声】に聞き覚えがあると感じた。

 霊気に反応した際の鳥肌はすぐに治まり、俺は現れた霊に話しかけてみた。


「……クリストファ、成仏してなかったのか」

『コーイチが気になって、海の向こうの楽園ニライカナイになんか行けないよ』


 いるんなら、最初から出てこいよ。

 俺がそう思ったのを感じたのか、クリストファはゴメンネと言って苦笑した。



※40話画像

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093086437372333

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