第33話:ハチロウ博士のヨーグルトメーカー

 ヨーグルト作りは割と簡単だ。

 種菌と呼ばれる培養のもととする乳酸菌と、牛乳で作るのはよく知られている。

 俺の母は、牛乳の代わりに豆乳でヨーグルトを作ることもあった。

 二千年前はスーパーのヨーグルトコーナーに粉末状の種菌が売っていたな。

 無糖のヨーグルトを種菌代わりにすることもある。


 豆乳ヨーグルト作りに使う豆乳は、原料が大豆のみで、大豆固形分が8%以上のもの。

 母は市販の無調整豆乳を使っていたな。

 今回、俺が使うのは自分が育てた大豆から作る豆乳だ。

 OISTで見つけた見つけた大豆を蒔いたら、すくすく育ってたくさん収穫できている。

 いくつかは俺が枝豆を食べたくなって、青いうちに収穫したけどね。


 大豆は豊富な蛋白質を含むけど、植物性蛋白質は肉食獣である猫には消化不良の原因になるらしい。

 特に生の大豆は、トリプシン・インヒビターという成分が膵臓の消化酵素を阻害するため、大量に食べると膵臓に負担がかかるという。

 豆乳は少量なら害にはならないそうで、これから作るヨーグルトも少し食べる程度なら問題ない。


「ハチロウ、作ってほしい道具があるんだけど」

「いいよ。何を作ればいい?」

「水でふやかした大豆を細かく砕いて、大豆の汁を絞り取れる道具が欲しいんだ」

「搾り取った汁はその後どうするのかな?」


 ハチロウは俺のリクエストから、更にその先を考える。

 俺は手順を説明しつつ、最終的に何が欲しいかを伝えるのが常となっていた。


「大豆の絞り汁を焦げつかないように混ぜながら、沸騰後10分くらい加熱するよ」

「ふむふむ、その次は?」

「こし布で濾して豆乳を手に入れたら、40℃まで冷ました後、この粉末種菌を混ぜるんだ」


 粉末種菌は、イオンOIST店に超長期保存されたもの。

 他にも種菌に使えるものはあるけれど、簡単そうなものを使うことにしよう。


「混ぜた後は?」

「6~12時間、25~30℃の室温で放置すれば、ヨーグルトが出来上がるよ」

「タマはヨーグルトを作りたいんだね」

「うん」

「なにか注意するところはあるかい?」

「他の菌が混入しないように、道具は熱湯殺菌が必要だよ」


 ヨーグルトという食べ物は猫文明には無い。

 けれど、を味見したから、ハチロウもヨーグルトがどんな食べ物か知っている。


「OK。じゃあ全工程を1台で出来て、使用後の自動洗浄と、殺菌や消毒機能もつけたらいいね」

「いつも至れり尽くせりな機能をありがとう!」


 ハチロウ博士は相変わらず、俺の求める以上の高性能な品を作ってくれる。

 人類滅亡後の世界で俺が全く不便を感じないのは、ハチロウのおかげだ。


 久々に食べる手作りヨーグルトは、発酵が穏やかに進んだのでほどよい酸味。

 それほど酸っぱくなくて食べやすいらしく、そのヨーグルトは猫たちにも好まれた。


 ※33話画像とヨーグルトの話

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093086352321055

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