第29話:念話と言語
「その薬物を発射したのはどこの国?」
俺は更に聞いてみた。
HGVを使ったのなら、薬物兵器を発射したのはHGV開発国だろう。
でも、自国まで巻き込んで滅亡させるなんて雑なことをするとは、先進国らしくない気がする。
『発射したのは、長距離弾道ミサイル実験で知られている某国よ』
「あ、やっぱり」
『その直後に隣国の全自動報復攻撃(Full Automatic Retaliatory Attack)を受けて、某国も壊滅したけど』
「壊滅してくれて良かった」
他の国が滅亡して、あの国だけが残っていたら、今の平和な生活は無かっただろう。
むしろ猫文明が発展することも無く、俺は目覚めさせてもらえないどころか某国の研究機関に解剖されていたかもしれない。
そんなことを想像してゾッとしていたら、足元に集まって座っている猫たちが心配そうに見つめてきた。
「あ、ごめんごめん。俺だけ話を聞いてたら訳が分からないよね」
「人類滅亡について何か分かったのかい?」
俺が声をかけたら、モリオン博士が問いかけてきた。
他の猫たちも興味津々で、目を真ん丸にして耳をピンと立ててこちらを見ている。
「二千年前に人類が滅亡した原因は、隕石じゃなくて兵器によるものだったよ」
「なんと……大きな戦争でもあったのかい?」
「戦争ではなくて、他国を滅ぼそうと一方的に毒ガス攻撃をした国の仕業だった」
「とんでもない国があったもんだねぇ」
「その国は隣国の自動反撃を受けて壊滅して、結局全ての国が滅び去ったらしい」
「我々の祖先は人間が大好きだったのに、そんなことをする人間もいたと思うと悲しいね」
「全ての人間が善ではないし、全ての人間が悪でもない。人間ってそういうものだよ」
俺と猫たちがそんな会話をしていたら、ケイトは驚いたみたいだ。
「ね、ねぇコーイチ、あなたもしかして猫と話せるの?」
「え? うん、普通に会話できるよ。ケイトには猫たちの言葉がきこえない?」
「私には猫たちがニャーニャー言っている声に、あなたが返事しているように見えるわ」
聞かれたので答えたら、ケイトは困惑した顔でこちらを見てくる。
そういえばケイトは猫たちには
「もしかして、猫たちは霊が見えても会話はできないのかも」
「というよりも、コーイチが猫語を理解できるようになったんじゃない?」
「私はさっきから彼女に念話を送ってみているが、届かないようだよ」
俺が予想を述べたら、ケイトとモリオン博士が言う。
目覚めた直後から猫たちと会話ができている俺も、二千年前は猫と話なんて出来なかったな。
ってことは、これも猫たちのフォースの影響だろうか?
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