第30話:霊魂保存の研究
いろいろなものが超長期保存されているOISTに、残っていた研究生ケイトの霊。
俺はふと気になって、ケイトに聞いてみた。
『ケイト、聞いてもいいかな?』
『なぁに?』
『ケイトの霊だけが残っていたのは何故?』
『友人を驚かせるためよ』
「えっ?!」
『というのは冗談、研究の為よ』
帰ってきた答えが想像したのと違い過ぎて、思わずまた声が出てしまったぞ。
つられて猫たちも驚いてしまい、座っている猫たち全員のシッポがブワッと膨らんでいる。
彼らにゴメンゴメンと謝った後、俺はケイトから話を聞いた。
『どういうこと?』
『私が所属していた研究チームは、霊魂の保存の研究をしていたの』
『そんなものまで研究してたのか……』
『ジャンルにこだわらず、興味のあるものは何でも研究するのが我が校のモットーだったからね』
霊やら魂やら形の無いものまで保存しようとした研究生たちがいたとは。
しかも成功してるっぽいし。
昔は霊なんて非科学的だと言われていて、研究する科学者はほぼいなかったそうだけど、最先端の研究チームは感性が違うな。
『私がいた研究ユニット、見る?』
『うん』
『猫たちも一緒に来たらいいわ。こっちよ』
ケイトが、スーッと空中を移動し始める。
思わずビクッとして、やんのかポーズしてしまう猫たち。
俺はケイトの【声】が聞こえない猫たちに、「見せたいものがあるらしいよ」と声をかけて、通路を進むケイトの後を追った。
猫たちも俺が歩き出した後ろからついてくる。
『ここよ。入っていいわ』
言われて入ってみた室内は、整理整頓が得意な生徒がいたのか散らかってはいなかった。
遺跡調査チームがこの部屋に入るのは初めてで、俺も猫たちもキョロキョロと辺りを見回す。
『この棚に霊魂の保存に関する資料が置いてあるけど、研究生以外にはわけがわからない内容かも』
「え~と、オーラと呼ばれる霊的なエネルギーとスピリットと呼ばれる精神的な存在の定着について……」
研究データは難解な英語が多く、解読にかなり苦労する。
オマケに英語を日本語に翻訳はできても、研究内容は一般人の俺にはほとんど理解不能だ。
「オーラというのは、我々がもつフォースに似たものかもしれないね」
「スピリットというのは、魂のようなものか、心のようなものかな?」
学者であるモリオンたちの方が、俺より理解できている感じだ。
室内にあるA5サイズのタブレットみたいなものは、オーラ検査用と書いてあることを告げたら、猫たちが入れ代わり立ち代わり肉球でプニッとタップしてみている。
『私の飼い猫で試したときは、オーラを検出できたのだけど』
『って、校内にペットを連れ込んだのか』
『あら、コーイチが連れてきた猫たちの数よりは少ないわよ?』
ペット持ち込みにツッコミを入れたら、涼しい顔で返された。
モリオン博士たちは俺のペットじゃないけど。
俺は猫を飼ってるんじゃない。
猫に飼われてるんだ。
あれ?
むしろ俺が、連れてこられたペットになるのか?
※30話の画像
https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093086075924820
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