第28話:空から降ってきたもの
『あの日降り注いだものは、大気圏外から世界各地へ向けて発射された化学兵器だったの』
「えっ?!」
ケイトから聞いた隕石の正体に、俺は驚きのあまり思わず声を上げてしまった。
霊との会話が聞こえていない猫たちが俺の声に驚いて、やんのかポーズのままビクッとしている。
「化学兵器?」
『人間だけに効果がある薬物よ。HGVの極超音速を使って散布され、全世界に広がって短時間で全ての人間を消し去ったわ』
兵器の正体について聞くのも、無意識に肉声になってしまった。
やんのかポーズを解除して座りながら、猫たちが首をかしげて俺を見ている。
弾道ミサイルで打ち上げ、宇宙空間で分離し、大気圏突入後は極超音速(マッハ5以上)で滑空飛翔し目標を攻撃する兵器、HGV(Hypersonic Glide Vehicle)。
極超音速で低空を滑空飛行することで敵の探知を避けつつ高速で攻撃目標に接近する。
「極超音速」の定義はマッハ5以上とされてはいるが、21世紀の時点で各国が開発を進めていたものの大半はマッハ10程度、マッハ15を目指したものもあったという。
極超音速性能に加えて滑空飛行を行うという特性により、防空・ミサイル防衛システムでの対処が困難な兵器だ。
主な開発国はアメリカ、ロシア、中国、北朝鮮などのほか、日本でも
『あれは自然災害ではなく、人災だったの。搭載されていた薬物は、大気圏突入時の温度上昇もHGVの爆発も効果に影響しない。その薬物を吸い込んだり触れたりすると、細胞が破壊されて人体は消滅してしまう』
「それで遺体が見つからないのか」
『無事だったのは、冷凍睡眠装置に密閉された上に呼吸が停止していたコーイチだけね』
衣類や生活用品が経年劣化せずに残るOISTで、遺体が1つも見つからないわけだ。
ケイトの【声】は俺だけに聞こえるものだけど、俺が話すことから内容を察したらしく、モリオン博士たちは静かに成り行きを見守っている。
「その薬物は、今は?」
『地球の大気全体に広がり、人類を滅亡させた後は100年ほどで自然に分解されて消えていったわ』
「それでクレーターを調査しても何も見つからなかったのか」
「今は大気も水も清浄よ。コーイチが薬物の影響を受けることはないから安心していいわ」
「最後の人類になっちゃったけどね」
猫文明の技術で検出できないウイルスとかじゃなくて良かった。
とりあえず、今生きている
※28話の画像
https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093085917374016
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