第46話:食物アレルギー
マーヤ様を抱っこしながら娘さん(王女様)の部屋まで歩いていくと、なにやら騒いでいる声が聞こえてきたよ。
「お魚は嫌い! お肉を持ってきて!」
「姫様は、お肉を食べると具合を悪くされるので、御用意できないのですよ」
「やだやだ! お肉が食べたい!」
……なんとなく、状況は把握できた。
多分、アレルギーだな。
肉食獣のイリオモテヤマネコで肉アレルギーとかあるのか。
しかも魚嫌い?
なかなか個性的な体質のお姫様のようだ。
「クーラ、侍女たちを困らせてはダメよ」
「あ、母様……」
マーヤの声に反応して振り向いたのは、可愛らしい仔猫。
幼いながらもヤマネコの特徴の頭部の縞がハッキリ出ている。
イリオモテヤマネコの子供、初めて見たぞ。
思わずほっこりしていたら、クーラと呼ばれた仔猫が駆け寄ってきた。
「あなた、ゼツメツキグシュね? クーラの病気を治してくれるの?」
なんか、覚えられ方が微妙だけど。
クーラ王女は無防備に俺に近付いてきて、軽々と跳躍すると肩に乗った。
「俺はタマと呼ばれているよ。よろしくね、王女様」
「タマ、覚えたわ。クーラも抱っこしてちょうだい」
おねだりされるだろうなって予想していた通りだ。
ここまで抱っこしてきたマーヤ様をソファの上に降ろすと、肩の上にいたクーラ姫がスルリと滑らかな動きで移動して、腕の中に納まる。
「じゃあ、ちょっと診るよ」
「はぁい」
本猫の了承を得て、俺は王女様の身体にフォースを少し流し込んで調べてみた。
肉アレルギー
肉の消化過程で分解されてタンパク質からペプチドやアミノ酸へと変化したものを、体内の免疫系が脅威と誤認し、ヒスタミンなどの化学物質を放出し、アレルギー反応を引き起こす。
主な症状:皮膚のかゆみ、赤み、湿疹、脱毛、下痢、嘔吐、便秘、呼吸困難など。
やはりアレルギーだ。
肉食獣でも肉アレルギーはあるんだね。
身体の異常が何か分かったところで、流し込むフォースを治癒の効果があるものに切り替えた。
「お肉が食べられないのは辛かったね。これからは食べられるようになるよ」
「本当? タマのフォース、温かくて気持ちいいね」
クーラ王女の免疫系統の正常化はすぐに完了した。
腕の中でゴロゴロ言い始めるクーラ王女が可愛くて、消費した精神力はフル回復だ。
「タマがヤママヤー族なら婚約者にするのに。種族が違って残念だわ」
「大人になったらもっといい相手が見つかると思うよ」
「タマ、クーラは私の双子の妹で、もう大人だよ」
仔猫なのに、ませたことを言い出す王女。
まだ早いよって意味を含めて言ってあげたら、マーレー王子から予想外の情報がきたぞ。
クーラ王女は肉アレルギーの魚嫌いだったため、成長のための栄養が足りずに未熟児となっていた。
これからは好きなだけ肉が食えるから、身体も大きくなるかな?
#__i_abe091ae__#
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます