第1章:二千年の眠りから目覚めた最後の人類

第1話:10年の筈が2000年経っていた

 俺はコールドスリープの被験者だった。

 大学入試に落ちて半分ヤケで申し込んだのを覚えている。

 別に痛くも痒くもなく、ただ眠ってるだけで大金が貰えるのは悪くない。

 最初は短時間、成功するごとに期間をのばして、最後に冷凍睡眠装置に入ったのは実年齢25歳の頃だった。

 コールドスリープ中は年をとらないから、今も見た目は18歳のままだけどね。


「次は10年後に会おう」


 研究チームの若手スタッフに、そう言われたのを覚えている。


 なのに目覚めたら喋る猫がいる時代になっていた。

 どういうこと?!



「俺が眠る前は地球に喋る猫はいませんでした。コールドスリープの実験が始まったけど、実用はまだの時代だったのを覚えています」

「我々が君を発見したのは、推定二千年くらい前の古代遺跡の中だったよ」

「……古代遺跡……」

「古代人を見つけたのは初めてだから、なんとかして目覚めさせようって皆で温めて凍結を解除したのさ」


 それで俺が目覚めた時、猫まみれになっていたのか。

 しかし、10年後の筈が二千年後に目覚めるってなんなんだ?!


 わけがわからず頭を抱えていたら、なぐさめのつもりか肉球でポンポンと肩を叩かれた。

 振り返ってみると、スティック状の小袋に入った物が空中を漂ってきて、目の前で停止した。


「とりあえず、流動食から始めようか」

「……なんか浮いてる……」

「ああ、我々はフォースという超能力が使えるのだよ」

「古代人は【手】が器用だったそうだけど、我々はフォースで物を動かす方が簡単なんだ」


 なんかそれ、大昔の映画であったような?!

 っていうかこの目の前に浮かんでいるコレ、どう見ても「ちゅー〇」だよな?


「これは古代人が作り出した至高の食べ物だよ」

「宇宙食としても人気の品だよ」

「我々の祖先はそれを食べたことがあり、その味が忘れられなくて研究して再現したものがコレなんだ」

「だから君の口にも合うだろう」


 ニコニコしながら言うキミタチ。

 確かに宇宙食にピッタリな形状だが。

 ちゅ〇るは人間用じゃない、猫用だ。


「すぐ用意できる流動食といえばコレくらいだから、食べておいてくれ」

「はい」


 モリオン博士に言われて、俺は仕方なく〇ゅーるを片手で掴み、袋を開けて液状食を口の中に絞り出した。

 手を使うのを見るのが珍しいのか、猫たちがじーっと見ている。

 総勢20匹くらいの猫たちの視線が!

 なんか、猫のオヤツ奪って食ってるような罪悪感(?)があるけど、気にしなくていい?


 俺は小袋の中身を完食した。

 人間の俺には薄味過ぎるけど、まあ美味しいものではある。

 これは、まぐろ味だな。

 まさか、猫からち〇ーるを貰う日がくるとは思わなかったぞ。



※第1話の裏話

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093084338924939

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