第4章:残されたモノ

第31話:ポジティブにいこう

 人類滅亡の真実は分かったけど、俺の気持ちや生活には特に影響は無い。

 猫たちは、祖先が愛した知的生命体が、天災ではなく人為的なもので滅びたことを知って、ちょっと悲しそうだったけどね。

 俺としては天災でも人災でも、気持ちはあまり変わらなかった。


 滅びたもんはしょうがない。

 それに、俺は独りじゃない。

 俺は、自分を目覚めさせてくれた猫たちと楽しく暮らせたら、それでいい。

 今の文明が平和で、猫たちが健やかであれば、俺も幸せだ。


 そんなわけで、俺は今日もフォースを使って猫たちの治療をしている。


「最近、なんだか目眩がするんだ」

「貧血だね。舌や歯茎が白くなっているよ」


 FeLV(猫白血病ウイルス感染症)が蔓延しているという村の集会所で、治療を受けるために集まった猫たちの中心に、胡座をかいて座る俺がいる。

 患者がたくさんいるときは、北国の村で覚醒した範囲タイプの治癒フォースを使うので、集まってもらった。


 ワクチン接種が普及しているそうだけど、100%効くわけではないという。

 田舎では、ワクチン接種を受けていない猫も多くいるらしい。

 体内にウイルスが入って免疫力が弱ければ、ウイルスが増殖して白血病を発症したり、リンパ腫ができたりする。


「重症の子たちはここへ」


 俺の指示で、もう歩けないくらいに弱ってしまった仔猫が3匹、膝の上に転送された。


 FeLVは、年齢が若いほど発症率や死亡率が高い。

 特に、免疫がまだ作られていない幼い仔猫は、ほぼ確実に発症して死亡すると言われるウイルスだ。

 重度の貧血による酸素不足でグッタリしている仔猫たちは、授乳期に母親から感染してしまったらしい。


『あったか~い』

『気持ちいい~』

『ぼく、ここで終わってもいいかも』

「こらこらこら、1歳前で終わってどうする」


 俺に触れただけで治癒は始まるので、少し体が楽になった仔猫たちが念話で言う。

 中には幼い身で昇天しようとする子もいて、俺は慌てて引き止めた。


「では、我々はグループスリゴロを」


 と言って、軽症や未発症キャリアの猫たちが、俺の周囲を歩きつつスリゴロし始める。

 膝の上の仔猫たちだけでも充分満たされている俺の精神力ゲージ(イメージ)は、あっさりとMAX振り切って必殺技モードだ。


「みんなまとめて健康になれ~!」


 木漏れ日に似たキラキラ光るものが室内に広がり、その場にいた全ての猫たちの体内からウイルスが消えた。

 更に、全員の免疫力が大幅に上がり、再感染を防ぐウイルス抵抗のようなものが体内で作られる。

 これで、この村でFeLVが蔓延することは当分無いだろう。



※31話の裏話と画像

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093086190962200

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