第2章:猫文明とフォース

第11話:猫草栽培と家庭菜園

 治癒のフォースでアババの頭蓋骨陥没骨折を完治させた数日後。

 俺は部屋の窓の外に造ってもらったベランダで、家庭菜園を楽しんでいた。

 猫文明の建築技術は素晴らしい。

 ベランダは俺が思い浮かべた日本家屋(戸建て)に似たデザインに仕上がったうえに、一般的なそれよりずっと面積があり、俺の想像以上の高機能を備えている。


「ここのパネルで水やり時刻や水の量を調整できるよ」

「えっ? 水やり機能つき?!」

「日照時間を調節したいときは、パネルの日当たり設定を使ってね」

「えっ? そんな機能もあるの?」

「台風がきたときは、このボタンを押せば防壁バリアに覆われて暴風雨を防げるよ」

「って、どこの基地?!」


 野菜や果物を食べない猫たちの文明に、農業の技術は無かったけど。

 俺が野菜や果物を育ててみたいと言ったら、天候を配慮した機能をつけてくれた。

 その機能が俺の予想以上で、説明を受けながら驚きっぱなしだ。


「農家なんて、今の時代に無いよね? なんでこんなに充実してるんだ?」

「ハチロウの趣味だよ」

「良い草を手に入れるためにここまでやるのは、ハチロウくらいだけど」

「今までみんなに笑われていた栽培技術が、役に立って良かったよ」


 設置を手伝った2匹に言われて、白黒ハチワレ猫のハチロウが照れ笑いしながら言う。

 猫たちは野菜を食べる習慣は無いけど、毛玉を排出するために草は定期的に食べるらしい。

 普通はそこらの草を食べるそうだが、ハチロウは草の質にこだわり、自分で栽培しているという。

 猫草のためにここまでやる猫、初めて見たぞ。

 おかげで快適な野菜作りが楽しめそうだ。



「あれぇ? どうしてこんなにトイレを並べているの?」

「まてミカエル、それはトイレじゃない」


 遊びに来たミカエルが、ベランダに並べたプランターを見つけて近付こうとする。

 掘り返される前に、俺は慌ててミカエルを抱き上げた。


「タマ、トイレの研究でも始めたの?」

「って言いながら入ろうとしないでね、シータ」


 さりげなくプランターに入ろうとする白黒カツラ猫シータもいる。

 もちろん、途中で小脇に抱えて阻止したけどね。


 天候対策は完璧な家庭菜園、とりあえず気を付けるのは、プランターをトイレと間違われないことか?


「僕の草は小さい箱で育てているから入られたりしないけど、これは対策した方がいいな」


 猫界トップクラスの農業技術をもつハチロウが、対策を考えてくれた。

 その後、設定した者以外がプランターに近付くと、ブシュッと大きな音がしてガスが噴き出る機能が追加された。

 ガスは人畜無害で、柑橘系の香りがする。


「僕たちはこの酸っぱい匂いが苦手だから、このガスがかかればみんな逃げ出すよ」


 ハチロウ博士、猫なだけに猫のことをよく分かっている。

 古代文明研究よりも農業研究した方が良さそうなハチロウのおかげで、トイレ誤認対策も完璧だ。



 ※画像:ハチロウのモデル猫

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093084706531336

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