第24話:コーヒーの木

 パン作りが簡単にできるようになった俺はコーヒーを求めて、かつて名護市と呼ばれた地域を訪れた。

 コーヒーノキが生育できるのは、赤道から南北に広がるコーヒーベルト内。

 コーヒーベルトは地球上の赤道を中心として、北回帰線と南回帰線との間の地域を指す。

 二千年前は、北緯25度線と南緯25度線との間がコーヒーベルトであると言われていた。

 沖縄県の島々は、その北限付近に位置しているので、コーヒーノキの栽培が可能だ。


 二千年前、名護市の農園で2000~3000本以上のコーヒーノキが栽培されていた。

 それを思い出した俺は、遺跡調査チー厶に調査をリクエストして、現地に同行している。


 やんばるの自然豊かな場所にあったコーヒー農園。

 コーヒーの種子から1杯のコーヒーになるまでの体験が楽しめる農園だった。

 人間はもういないけれど、木は残っているかもしれない。

 森の傾斜や谷間を利用したり防風林を整備したり、台風の影響を受けにくく自然に近い環境で、農薬は一切使用せずに育てられていたコーヒーノキ。

 コーヒーチェリーと呼ばれる赤い実の収穫体験は11月下旬~4月下旬ごろまで出来たから、今なら実がなっているかな?

 その果実の中にある種子がコーヒー豆だ。

 遺跡調査チームも古代人の嗜好品になっていたという植物に興味津々で、農園跡地と思われる森を調べて回っている。



「お! あったあった! これがコーヒーノキだよ」

「おぉ、これがそうなのか」


 お目当ての植物は、すぐに見つかった。

 もともと自然な状態に近い栽培方法だったから、木々はしっかり生き残っている。

 猫たちはフォースを使ってその成分を調べ始めた。


「コーヒーにはカフェインという成分があって、人間には嗜好品だけど猫には有害なものの1つらしいね」

「この果実にカフェインを多く含むようだ」

「葉にも少量のカフェインが含まれているね」


 まず、予想通りカフェインは猫には害となる成分だった。

 人間も摂取し過ぎれば有害だけどね。


 その他の成分としては、コーヒーチェリーにはポリフェノールの一種クロロゲン酸、コーヒーの香りの主成分アルデヒド類、ピラジン類、フラン類がある。

 アルデヒド類はコーヒーの独特な香り、ピラジン類は芳ばしさ、フラン類は甘い香りを生み出す成分だ。

 アミノ酸やたんぱく質も含まれており、特にたんぱく質は12%近くで、多めに含まれているようだ。


 とりあえず完熟した濃い赤色の実をバケツ1杯ほど採集して、俺たちは研究所へ帰還した。


 コーヒーノキの果実は甘く、皮や果肉は生食できる。

 せっかくだから果肉も味わおう。

 コーヒーチェリーと呼ばれるものの、さくらんぼほどは甘くなく果肉も少ないけど、これを料理に使っている店があったな。

 そんなことを思いつつ、洗って小鉢に入れた赤い実は、コーヒーとは全く違う素朴な甘さをもっていた。



※コーヒーノキの花や実の画像

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093085508967876 

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