第17話:人間のフォース

 俺はルネの治療を終えた後、順番待ちをしている他の猫たちの治療を続けた。


「ねえタマ、ずっとフォースを使いっぱなしだけど疲れない?」

「治癒系のフォースは精神力の消耗が激しいから、医者は1日に3~4回くらいで休憩するらしいぞ」


 ハチロウとイナリはちょっと心配になったようだ。

 でも、俺は全然疲れを感じない。

 むしろ、患者(猫)と触れ合うことで、精神力が回復している感じだ。


「疲れるどころか、癒されてる感じだよ」

「えっ? そうなの?」

「人間のフォースって謎だな」


 フォースは所謂「超能力」なので、基本的に精神力を消費するらしい。

 精神力はリラックスしたり眠ったり美味しいものを食べたり、嬉しいことがあったり応援されたりすると回復するという。


「あ、もしかしたら、俺もみんなのモフモフに癒されてるのかも」

「モフモフ?」

「毛皮のことか?」


 何匹目かの治療で、俺は気づいた。

 猫たちに触れていると、精神が満たされるのを感じる。

 そういや誰かが「モフモフは癒し」と言っていたような?

 二千年以上前だけど。


「多分、俺は猫の体に触れることで、精神力が満たされるみたいだよ」

「え? そうなの?」

「人間の手には癒し効果があるとは聞いたが、それは初耳だな」


 そんな話をしていたら、暇そうにしていた仔猫たちが顔を見合わせる。

 チビたちは何か思いついたように、一斉に駆け寄り、足や肩の上に乗ってきた。


「もしもし坊やたち、俺は乗り物じゃないよ?」

「お手伝いだよ~」

「ぼくたちに触ると回復するんでしょ?」


 どうやらチビたちは、精神力回復に協力するつもりのようだ。

 回復効果は間違いなかった。

 小さいモフモフが足や肩の上でゴロゴロ言い始めたら、精神力がフル回復した気がする。


 なにこれ? かわいいは最強か?!


「どお~?」

「う、うん、回復MAXだよ」

「よかった~」

「でも頭の上は落としそうで動きづらいからやめてね」

「え~残念」


 そんなやりとりを見ていたら、成猫たちが興味津々で歩み寄ってきた。

 彼らも何か手伝いたかったのかもしれない。

 乗るスペースは無さそうだからか、成猫たちは俺を取り囲み、グループスリゴロを始める。

 猫カフェでもここまで大量の猫にスリゴロされないだろう。


 なにこれ? モフモフの楽園か?!


 もしも俺の精神力ゲージがあったなら、きっとMAX超えて必殺技とか出せる状態だったのかもしれない。


「あ~もう、みんなまとめて健康になれ~」


 って言った途端、俺の体から光が湧き出た。

 それはまるで木漏れ日のような、安らぎに満ちた光だったらしい。

 その光は室内にした猫たち全員を包み、病や怪我を完治し、病を寄せ付けず怪我もしない健康体に変化させた。



※17話の画像と裏話

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093085090925843

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