第3章:隕石群と人類
第21話:消えた人類
古代遺跡を調査していて、不思議に思ったことがある。
それは、遺体が1つも残っていないこと。
まるで、今まで生きていた者が忽然と消え去ったように、野ざらしの遺体は1つも無かった。
OISTはありとあらゆるものが二千年前とほぼ変わらぬ状態で残されているけれど、見つかった人類はコールドスリープで保存されていた俺だけだ。
研究者たちはどこへ行ってしまったんだろう?
「人類は二千年ほど前に飛来した隕石群が何かの影響を及ぼして絶滅した、としかデータは残っていないようだ」
「僕たちの文明の始まりは、隕石群の飛来で人類が滅亡した後からと伝えられているよ」
「ミイラと呼ばれていたらしい特殊加工の遺体や化石なら見つけたけど、古い物ばかりだね」
「でも、滅びた頃の遺体や遺骨は無いなぁ」
「調査チームが見つけた二千年前の人類はタマが初めてだよ」
古代文明研究所のメンバーから聞いた話は、こんな感じ。
隕石が何をもたらしたのかは、分からない。
もしもウイルスだとしても、
それに、二千年前の人類で見つかったのは俺だけで、その時期に死んだ人が見つかっていないのも謎だ。
モリオン博士たちは人類滅亡の原因も調査中で、現時点では「世界各地に流星が降り注ぎ、人類は滅び去った」という伝承だけが唯一の情報らしい。
「もしかして、遺体を分解消去してしまうウイルスや細菌が隕石に付着していたのかな?」
「隕石の衝突クレーターと思われる場所も調査したんだけど、ウイルスは検出されなかったよ」
「検出できないものだったりして?」
「だとしたら、タマが感染して今頃死んじゃってるんじゃない?」
「人類だけに感染が広がるウイルスで、人類がいなくなったからウイルスも消えちゃってるかも?」
「隕石に付着して地球まで来るようなウイルスが、二千年くらいで跡形もなく消え去るかなぁ?」
家庭菜園のキュウリを収穫しながら、俺とハチロウはそんな話をしていた。
人類を滅亡させた「何か」は、今は無くなっているようだ。
とりあえず、今は自分が健康でいられることと、キュウリの豊作に感謝しておこう。
「ねぇねぇ、このキュウリ1つ貰ってもいい?」
「いいけど、食べ過ぎるなよ」
「だいじょうぶ、ママに見せるだけだから」
収穫を手伝っていたミカエルがおねだりするので、俺は採れたてキュウリを1本あげた。
ママに見せてどうするんだろう? って思いつつ。
ミカエルがフォースでキュウリをどこかへ転送した直後、誰かの悲鳴が聞こえた。
「んにゃあっ?!」
「やったぁ! 実験成功だぁ」
「おいおいおい、なにしたんだよ?」
「ママにキュウリを見せたんだよ」
「って、今の悲鳴はポウ博士か」
そういや俺、ミカエルやハチロウに「猫がキュウリを見て驚くって話が大昔にあったよ」って話したな。
ハチロウ曰く「普段は無い物が置いてあるから驚いただけかも?」とのことだったけど。
ミカエルは「試してみよう」と考えて、
イタズラっ子はその後、ママにしこたま叱られた。
※21話の画像と裏話
https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093085277843534
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