第6話:古代の研究施設

 高台に広がる多くの建物。

 頑丈そうな灰色の建物と、リゾート施設のような赤瓦の建物、その向こうには青い海が見える。

 その建物群には見覚えがあった。

 何故ならそこは、俺が被験者となった研究施設だったから。


 沖縄県国頭郡恩納村にあった、「沖縄科学技術大学院大学」通称、「OIST」。

 世界トップクラスの教育研究機関だったのを覚えている。

 5年一貫制の博士課程を有する私立の大学院大学で、学生の大半は外国人、日本人は1~2割程度、沖縄が所在地なのに、沖縄県民の合格率は1%以下というトンデモナイ大学。

 西暦2222年、その大学の研究ユニットの1つに、冷凍睡眠の研究があった。


 ちなみに、俺が入試で落ちたのは沖縄科学技術大学院大学ではない。


 俺は 沖縄県那覇市首里にある沖縄県立芸術大学の音楽学部を目指して、落ちた人。

 オヤジには「落ちたら就職しろ」と言われていたよ。

 半分ヤケになりながらハロワに行ったら、コールドスリープの被験者募集なんていう募集項目があり、面接(ほとんど健康診断だった)を経て被験者になった。

 健康チェックと凍結を繰り返して、何回目かもう忘れたけど10年の予定が2000年経ってて、現在に至る。


 そういえば、人類は何故滅亡したんだろう?


「ねえモリオン博士、人類は何が原因で滅亡したんだ?」

「人間と暮らしていた祖先からの言い伝えによると、ある日たくさんの流れ星が地上に降り注ぎ、人間だけが死んでいったらしいよ」

「隕石かな? それに未知のウイルスが付着していたのかもしれないな」


 話しながら、俺は二千年以上ぶりに研究棟へ続くスロープを歩く。

 ロビーから研究棟への入り口は1つだけだから、久しぶりでも迷わなかった。



「タマの冷凍睡眠装置と、先日組み立ててもらったキャットタワーも、この遺跡から発掘したものだよ」

「そういえばコールドスリープの他に様々な物の長期保存研究もしていたな。どうりで段ボール箱も中身も、二千年経っても経年劣化がほとんど無かったわけだ」


 保存実験では、いろんな物を試していると聞いたことがある。

 俺はずっとこの施設にいたけど、コールドスリープ中なことがほとんどで、他にどんな実験をしていたのか、よく知らない。

 キャットタワーを実験に使ったのも知らない。

 所員に猫好きでもいたんだろうか?


「世界各地にある古代遺跡の中でも、この遺跡は特に保存状態が良いんだ」

「多分、建物や設備も保存実験対象にしてたんだと思うよ」


 二千年前の物とは思えないくらいにしっかり残っている内装。

 キョロキョロと見回しながら、モリオン博士と俺を含む調査チームは建物の中を進んでいった。



※第6話の裏話

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093084340006385

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