第5話:遺跡調査へ行こう

 胃の機能が回復して固形物(カリカリ)が食べられるようになり、運動能力も正常に戻った頃。

 発掘品の文字が読めることが分かった俺は、遺跡調査チームに同行してほしいと頼まれた。


「発掘品の取り扱い方が、その場で分かる方が安全だと思うの」


 と言うのはミカエルのママで、オッドアイ白猫のポウさん。

 たしかに彼女の言うとおり、未知の物に触れるよりも、取り扱い方法を知ってから触れる方が安全だ。


「人間の道具は、取り扱いを間違えると危険な物が多いからね」

「俺もそう思うよ」


 モリオン博士も分かっているようだ。

 俺も同意して、次回から遺跡調査チームに加わることにした。



 調査チームの出発日。

 俺の部屋に、チームの猫たちが集まった。

 モリオン博士とポウさんを含む、オスメス合わせて5匹だ。

 初対面ではなく、コールドスリープから俺を目覚めさせた猫たちなので面識がある。

 俺の凍結を解除した際は研究所の猫たち全員集合だったので、もっと多かったけどね。


「では行くよ~、フォースで移動するから、タマは床に座ってね」

「俺は座ってるだけでいいの?」

「人間の男性がよくやるという【胡坐をかく】座り方で頼むよ」

「OK」


 モリオン博士の指示に従い、胡坐をかいて床に座る。

 調査チームの猫たちが、俺の周囲に群がった。


「ではみんな、タマに乗って」

「「「は~い!」」」

「えっ? 俺、乗り物?」


 胡坐をかいた足の上に、猫たちが次々に乗り込む。

 しかし成猫4匹も乗るほど、俺の胡坐は広くない。

 猫たちはまるで椅子取りゲームのように押し合っている。


「ふふふ、特等席ゲットだぜ」

「ああ、いちばん良い場所とられちゃった」

「ミノル~! ダイエットしろよ」


 なにをやっているのやら。

 キミタチ、遺跡調査に行くんじゃないの?


 苦笑する俺の胡坐のド真ん中に陣取ったのは、巨猫ミノル。

 真っ白ブルーアイで色的には美しいのだが、普通の成猫2匹分の巨体である。

 ズッシリしたその重さで、他猫に押し出されずに勝者(?)となった。


「しょうがない、ミノルの上に乗ろう」

「じゃあ、私はタマの肩に乗るわ」

「俺の足が痺れる前に移動してくれ……」


 押し出された残りの猫たちは、ミノルの上に乗ったり、俺の肩に乗ったりしている。

 結局全猫の重さが俺にかかるわけで、まるで苦行のようだ。


「全員乗ったね? ではみんな、フォースを合わせて~、出発!」


 モリオン博士が合図した直後、周囲の風景がグニャリと歪む。

 風景は違うものに変わっていく。

 さっきまで研究所の俺の部屋にいたのに。

 猫たちと俺は、遺跡と思われる建物群の前に移動していた。



※第5話の裏話

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093084339871534

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