第40話
すっかり騙されましたと言う久遠に、黒髪の少年はクスりと笑った。
「そう。昨日のはぜ~んぶウソ。オレはリンチにも遭ってない。あいつらはオレの仲間だったってワケ」
"オレの演技力、なかなかのもんだったろ?"腕組みをし語る彼の表情に、昨日の弱々しい面影など微塵も残っていなかった。そんな彼に対し、久遠は顔色ひとつ変えずに問う。
「...演技ということは、そこに特定の人物が来ると予測していたからですよね?」
それは自分だったのか。そう少年に聞くと、彼は「そうだ」と返答した。その言葉に久遠は、さらに質問をする。
「僕と貴方は、昨日が初対面のはずです。なのにどうして、僕のことを知って―――」
そこまで言うと、久遠はハッとした。その表情に、少年は口角を上げる。
「気がついたみたいだな。そう...このオレも、運命を正しく変えてもらった人間の一人だ。こんなに今が楽しいのも、全部"あの人"のおかげだ」
久遠の予感は的中した。こちらは初対面なのに、何故か相手は自分のことを知っている。―――冬華のときと、全く同じだ。と、いうことは...
「...いまようやく、貴方の目的が解りました」
久遠は遥たちの方に目をやる。遥は不安そうに、こちらの様子をうかがっていた。
「...僕がここに来た以上、彼女たちにもう用はないはずです。彼女たちの縄を、ほどいてください」
そう話す久遠の声は穏やかだった。そんな彼を馬鹿にするように少年は言う。
「声と表情が一致してないぜ?...だけどさ、こうやってあいつらが人質になったのも、全部アンタのせいなんだって」
遥たちの方を指さしながら、彼は話をつづけた。
「だってそうだろ?昨日お前が大人しくやられてたら、今日こうやってオレが動かなくてもよかったんだ。...大変だったんだぜ?お前と関わっているヤツを探すのに。だがそれも、今日お前が学校に来たおかげで簡単に特定できた」
長谷川の言葉を聞いた遥の瞳が、僅かに揺れ動いた。こちらを向いた彼と視線がかち合い、遥は目を逸らす。
「まぁとにかく、こっちの目的は達成できたんだ。望み通り、縄を解いてやるよ」
彼がクイっと顎を動かすと、金髪の少年達は渋々縄をナイフでほどいた。遥の友人達は、ようやく身体を自由に動かせると安堵の表情を浮
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