第39話
***
「―――どうして?なんであの人たちと一緒にいるの?」
「あぁ、あいつらはオレの道具。―――ちょっと骨にヒビいれただけで、泣いて命乞いしてきたんだぜ?」
"道具"をしり目にせせら笑う彼に、遥は言葉を失っていた。...光を失った瞳をした、目の前にいる少年。それはまさしく、久しく学校に姿を見せなかった人物だった。
「―――長谷川くん、変わったね」
「あ?」
遥は勇気を振り絞り、黒髪の少年の瞳を見る。少年は一旦目を逸らしたが、やがて軽蔑するような眼差しで遥の方を向いた。
「...そうさ、オレは変わった。今までオレを散々馬鹿にしたあいつらを、自分の力でねじ伏せたんだからな。なあ、偽善者さんよぉ?」
オレは助けなくて、あいつは助けるんだな。そう言うと彼は、公園に立ちすくむ時計を見た。遥が自宅に電話して、はや20分が過ぎていた。友人たちは、声を出す気力もなくただ俯いている。一向に姿を見せる気配のない久遠に、次第に少年達は苛立ちをあらわにした。
「おい、本当に電話したんだろうな?」
「ひっ...!!」
金髪の少年が、キレ気味に友人の喉元にナイフをちらつかせた。彼女は瞳に涙を浮かべ、懇願するように首を横に振る。
「暇だからよ、アイツが来るまで順番に相手してもらうぜ。―――時間をかけて、ゆっくり壊してやるよ」
そう口角をあげると少年は、友人の胸元のリボンに手をかける。
「い、いやぁっ!!」
身をよじり、彼女は必死に抵抗する。これから起こらんとする悲劇に、友人達は思わず目を覆った。―――少女たちが諦めかけたそのとき、ついに待ち望んでいた姿が見えた。
「僕はここにいる!」
「―――っ、久遠さん!!」
久遠は遥の方を見るなり、鋭い眼差しで少年らを睨みつけた。金髪の少年は立ち上がると、ナイフを久遠へと向ける。
「...」
しかし久遠は、彼の挑発的な行動には見向きもせず、親玉へと歩み寄った。そして"長谷川くん"と視線がぶつかると、その口をゆっくりと開いた。
「...まさか、貴方が首謀者だとは思いませんでしたよ。昨日の出来事は、演技だったということですね」
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