第31話
が意地悪そうに久遠羽交い締めていた。眉間にしわを寄せる彼に、少年は勝ったと言わんばかりの表情をみせる。久遠は必死に抜け出そうとしたが、睡眠不足と疲労が相まって力が入らない。
「はっ、所詮この程度かよ」
少年は嘲笑うと、久遠のフードを乱暴にとる。そして彼の髪の毛を見た瞬間、少年達は目を丸くした。
「―――センパイ、ちょっと来てください!!」
すると、今までこちらを見向きもしなかった人物が近づいてきた。センパイと呼ばれた、金髪の人物。久遠は″彼″かもしれないという淡い期待を抱き、目を凝らす。―――だが、その少年は全くの別人だった。
「...本当にいやがった」
金髪の少年はそう呟くと、鋭い眼光で久遠を睨む。そうしてすぐ後ろにいる、倒れこんだままの学生を指さした。その痛々しい姿に、久遠の目の色が変わる。
「お前、さっきアイツを解放しろとか言ったよな?」
その問いに、久遠は黙って目で答えた。すると少年は、ほくそ笑みこう言った。
「お前のご希望どおりに、アイツにはもう手出ししねーよ。ただし―――」
言い切るが速いか、拳が久遠の腹部に飛んできた。
「お前が次のサンドバッグになってくれんならなァ!!」
「っ!?」
避けられるはずもなく、少年の攻撃をもろに食らってしまう。久遠は苦痛に顔をしかめた。押さえ込んでいた少年達は、彼を乱暴に地面に叩きつける。
「げほっ、卑怯な...」
なにしろ多勢に無勢。分が悪いのは明らかである。久遠は意識が朦朧とするなか、必死に打開策を練る。―――何か、何かこの場を切り抜けられる策を!!
「卑怯?何ならタイマンでもいいんだぜ?...まぁ、今のお前に勝ち目はねえだろうけどな」
金髪の少年はニヤリともう一発久遠を殴り、腹部を片足で踏みつける。他の四人は、それを面白そうに傍観していた。
「...勝ち目はない、ですか...。それは、僕の目を見てから...言ってくれますか?」
そう言うと久遠は少年の眼を捉えた。翡翠色の左眼が、金髪の少年を深い眠りへと誘う。
「なん、だ...?急に、眠く―――」
その間、ものの数秒。そのため、彼の仲間は何が起きたか解らないと
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます