第30話
刻もはやく帰還するために、懸命に前に進む。けれど彼は、公園の前で足を止めた。
「あれは―――」
公園には、高校生くらいと思われる者が五人いた。そのなかに一人、目立つ金髪の人物。後ろ姿しか分からないが、確認して損はない。だが、久遠は異変に気がついていた。...五人の足元に、人らしき姿が見えていることに。それはピクリとも動いておらず、何を思ったか一人の少年がそれを蹴り飛ばした。
『...まずい』
蹴られたのは、やはり人だった。学ランを着た少年は、苦しそうに腹部を抑えている。それを見て何人かは笑罵し、さらに暴行を働こうとしていた。冷や汗が頬をつたう。本能的に危機を察知した久遠は、急いでその場を離れようとした。
「おいてめー、何見てんだよ」
しかし不幸なことに、ガラの悪そうな一人にこちらの存在がバレてしまった。他に三人も一斉に久遠を睨む。
『―――このままだと巻き込まれる!!』
だけど、このまま″彼″を確かめるために引き下がるわけにいかない。それに―――
「おい、シカトしてんじゃねぇよ!!」
制服姿の少年が、キレ気味に近づいてくる。その目は、新たな獲物を見つけた獣のようにぎらついていた。ほかの三人は下衆笑いを浮かべ、高見の見物をしている。
「...その人を、解放してください」
久遠はあくまで冷静に、少年達に説得する。するとその言葉に少年達は、馬鹿にするような顔をした。
「はぁ?」
「その人を、解放してください。...それ以上は命に危険があります」
少年との距離は、わずか1メートルくらいになっていた。それでもなお、久遠は食い下がる。
「あ?偽善者ぶってんじゃねえよ」
そう怒声を放つが速いか、最初に目が合った少年が殴りかかってきた。久遠は、間一髪でそれをかわす。
「避けてんじゃねぇ!!」
少年はさらに怒りを増し、何発も拳を振りかざしてきた。久遠は間合いを取りながら、何とか全てかわす。
「っ!?」
すると突然、背後から手が伸びてきた。完全に不意打ちだったため、久遠はあっさりと抑えつけられる。振り向けば、仲間の背の高い少年
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