第29話

***


目が覚めると、窓の外には鉛色の空が広がっていた。眠りが浅かったのか、瞼が重い。半ば意識がないまま階段を降りると、遥がどこかへ外出する準備をしていた。

「久遠さん、おはようございます」

遥は久遠と目が合うと、にこやかに挨拶をした。紺のジャケットに、チェックのリボンにスカート。手元にはライトブラウンのショルダーバッグがあった。

「おはよう。えっと、今日は...」

「あ、はい。私はこれから学校に行くんです」

ここから自転車で10分くらいのところにあるんですよ、と彼女は言った。もうすぐ期末試験というのがあるらしく、その対策に追われているという。遥は準備を終えると、恵美にいってきます言って家をでた。

「学校、か」

自分も本来なら、まだ学校に通っている年だ。そう思うと、胸が痛い。―――もし、僕が普通の人間だったなら。

『...』

久遠はやるせない思いを抱いたまま、窓に映る空を見つめた。


***


時間を見計らい、久遠は早速目的を果たすべく行動にうつっていた。用件を聞いた恵美は少し不安そうな顔をしていたが、行動しなくては何も始まらない。

『何としても、無事に帰らないと』

″彼″居場所がわからないため、ひとまず久遠は人通りの多いところを歩いてみる。そこにはいたるところで交差する、人、人、人。これだけのひとがいれば、少しは望みが持てる。そう信じ、久遠はすれ違うひとと目が合わないようにフードを深くかぶった。

『髪色に特徴があるから、いればすぐに目にはいるはずなんだけどな...』

しかし全体を見渡しても、視界にはいるは黒、茶ばかり。やはり、そう上手く事が運ぶはずもなかった。だが、落胆している暇はない。

『ここにはいないか...』

―――そうして久遠は各地を歩き続け、気づけば陽が傾きはじめていた。街灯が灯りはじめ、ひとはぽつりぽつりと消えていく。時間切れだ。

「結局見つけられなかった...まあ、初日で見つかるわけないか」

今日一日歩き通しだったため、久遠の体力は限界だった。それでも一

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