第24話

***


久遠の思いとは裏腹に、その一部始終を観察する人物が物陰に一人。死角に潜む黒髪くせ毛の男が、サングラス越しに眼前の光景を覗いていた。手には小型のレコーダーと望遠鏡が握られている。

『...我々から逃げられると思ったら大間違いだ』

まだ20代だろうか、彼は壁に背を向け限界まで接近を試みる。そんなことはつゆ知らず、久遠は錯乱状態の冬華にゆっくりと歩み寄っていく。

『!!あれは...』

望遠鏡の向こうに映る景色。それは、まさしく久遠が力を使った決定的瞬間だった。その数秒後、若い女性は久遠に支えられる形でぴくりとも動かなくなった。

彼はそっと女性をフェンスにもたれ掛けさせる。

「左眼の色が変わった...!?そうか、あれが″針導の瞳″。対象の意識内部に干渉し、その運命を修復する力、か...」

男はそう呟くと、襟元につけているピンマイクを口元を近づけた。

「標的(ターゲット)の覚醒確認。このまま彼を追跡する。直ちに作戦を開始せよ」

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