第28話
人は、運命という鎖に縛られている。
人は、運命という導を恨んでいる。
...勿論、全ての人間がそうではない。
だが、誰もが一度は「なんでこんな目にあわなきゃいけない」「どうして自分だけ不幸なんだ」などと思ったことがあるだろう。
気づいていないかもしれないが、それが運命を恨む瞬間だ。
運命を自分の手で思うが儘に変えることができたら。
そう望む者も少なくはない。
私はとある実験に伴い、この本を書くことにした。
次のページに、それを記そう。
いつの日か、誰の手にも触れられることなく、彼の手に渡るように。
私は、ただそれを願う。
ひあいなるもの
をせんどうさせ
とわのねがいを
ものがたるもの
せいいをふるう
***
「変わった書き方の本だな...それにしても″運命″、か」
不思議な本に一層興味を持った彼は、さらにページをめくった。しかし、白紙が続くばかりで一切何も書かれていない。
『この本は書きかけなのか...?』
パラパラと最後まで目を通しても、一文字たりとも書かれていない。一体これは、どういうことなのか。中途で書くことを止めてしまったのだろうか。
『折角面白そうなものを見つけたのにな』
この本のことを、明日二人に聞いてみようか。久遠は少々残念に思いながら、本を閉じた。
***
彼は再び、夢を見た。両親と過ごす、暖かな夢を。―――それは彼の奥底に眠っていた、遠い記憶であった。毎日が輝いていた、あの日々。記憶のなかの両親の顔は、ぼんやりとしかわからなかった。
彼は両親に手を伸ばしたが、それは届かなかった。
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