第27話
その言葉に、彼の心臓は大きく脈をうった。平静を装いつつ、彼女の方を見る。
「理由は...冬華さんのファンだってこと、私たちにばれないようにしたかったからですね?」
「...え?」
予想だにしない回答が返ってきたため、久遠は肩の力が抜けていくのを感じた。反応を見た彼女は、さらに勘違いを加速させる。
「びっくりしましたか?私、こう見えて推理小説が大好きなんです。なので、久遠さんの考えも簡単に推理できました!」
―――推理小説もビックリな答えを導き出しているが。そうとは知らず、彼女はこの回答に至るまでを得意げに話してくれた。
「イベントが終わった直後にどこかへ行ってしまったのは、冬華さんのサインを貰いに追いかけたからです。それと、外が騒がしくなったときに私たちと合流したのは、ほかにもファンがたくさん来て諦めたからですよね?だって久遠さん、戻ってきたとき表情が少し暗かったですから...」
「...」
呆気にとられる久遠に、どうですか?と言わんばかりの表情を見せる。冬華を追いかけた、という点では当たっているものの、ほかはやはりことごとく外れていた。そこで久遠は思いついた。この間違いを利用しようと。
「―――流石、推理小説を読んでいるだけはあるね。正解だよ」
「本当ですか!?まさか本当にあたるなんて...」
吹き出しそうになるのを堪え、感心したような素振りをみせる。するとそのリアクションに満足した遥は、お休みなさいと言って部屋を出た。
「推理があたってなくてよかった...」
ドアを閉めた久遠は、ほっと胸を撫で下ろす。しかし、まさか行動を推理するなんて。彼女の突拍子もない行動には、毎回驚かされる。
「さて、と」
久遠は立ち上がると、昨夜から一度も開いていない例の本を手に取る。それは相変わらず、平然と机の上に居座っていた。―――ひとたびページを捲れば、またゆうべのようになるのだろうか。警戒しつつ、椅子に座り本の1ページ目を開いた。
「ここは昨日読んだ...問題は次からだ」
2ページ目には、挿絵はなく見開きいっぱいに文章が書かれている。しかし、特に変わったことは起こらなかった。
「何も起こらないな...やっぱり気のせいだったかな。けれど―――」
文章は何故か手書き。目を通すと、そこにはこう書かれていた。
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