第15話
久遠が口を閉じると、恵美と遥は彼が家に身を置くことを快諾してくれた。
「―――ここまでが、僕が今後のすべきこととその経緯です。」
何か質問はありますかと久遠が聞くと、遥はこう尋ねた。
「私も、その人探しをお手伝いしてもいいですか?」
「え?それは嬉しいけど...」
捜してくれるの?と聞くと、彼女はもちろんです!と澄んだ笑顔を見せた。目の前で会話する二人を、恵美は幸せそうに眺めていた。
「えっと、久遠君は人捜しが終わるまでここにいるのよね?」
「は、はい」
申し訳ありませんと久遠が頭を下げると、恵美は首を横に振った。
「あ、責めている訳ではないの。ただ、聞きたいことがあって」
何ですか、と久遠は首を傾げる。
「久遠君は、お洋服とか替えはあるのかしら?」
「いえ...逃げるのに必死だったので殆どないです」
それを聞いて恵美はそれなら、と久遠に提案を言った。
「今から、皆で車でお出かけしませんか?」
「やったぁ!それじゃあ私、早速着替えてくるね」
恵美の言葉を聞いた遥は、嬉しそうにぱたぱたと階段を上がっていった。
「えっと...いいんですか?」
「もちろんよ。新しいお洋服を買ってあげるわ。お金のことは心配しないで」
「ありがとうございます」
恵美に軽く一礼してから借り部屋に戻った久遠は、着替えと変装の準備を始めた。
『変装でごまかせるのは難しいけど...少しでも身なりを変えないと』
最初に身につけていた装飾は全て外し、持ち合わせのサングラスを掛けた。髪はなるべく目立たないよう帽子を深く被る。これで目を欺けるとはあまり思えないが、何もないよりマシだ。黒スーツの男達に見つかる恐怖を一抹覚えながらも、久遠は玄関へ向かった。
「お待たせしました」
「あら久遠君。昨日とはまたイメージが違いますね」
久遠が玄関へ着いたときには、もう恵美と遥は既に準備が出来ていた。久遠も急いで靴を履く。
「はい、少しでも"彼等"の目を誤魔化せたらと」
「そうだったの...」
淡々と理由を述べる彼に、恵美はそれ以上何も言えなかった。
「お母さん、久遠さん、はやく行こう!!」
そんな二人をよそに、車内で待ちきれないといった様子で遥が手を振っている。
「行きましょう?」
「...ええ」
恵美は彼女に微笑しながら、車に乗り込みショッピングモールへと出発した。
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