第14話
「どうしたの?」
「あ、いえ、これは...」
不審に思った久遠が尋ねると、彼女は一瞬にして顔が真っ赤になった。
「父の...写真なんです。仕事に行ったっきり、ずっと帰ってこないから。連絡すらこない状況で...『はるに寂しい思いは絶対にさせないぞ』って言ったのは、お父さんなのに」
子供っぽいですよねと、彼女は目に涙を浮かべながら言った。
「遥さん―――」
久遠が言葉を紡ごうとしたが、彼女はそれを遮った。
「...朝ごはん、出来てるんですよね?教えにきてくれて、ありがとうございます」
はやく行かないと冷めちゃいますよ?と彼女はベッドから下り、久遠の手を引いた。彼女は笑っていたつもりかもしれないが、彼は胸が痛むのを感じていた。僕は彼女の力に、助けに、なれないだろうか。―――いや、なれるなれないじゃない。なるんだ。
『...今度は、僕が遥さんの力になる番だ』
久遠はそう繋がれた手に誓った。
朝食が済んだあと、久遠は二人のいとまを見計らいリビングに集まってもらった。彼女達が耳を傾けるなか、久遠は話を続ける。
「話の内容は、これから僕が行動すべきことについてです...そこでお二方にお願いがあります。今から僕の言うことは、信じ難いことかもしれません」
恵美がくすっと笑う。
「大丈夫よ。私達は、貴方を信じてます。だからどうか、私達のことも信じて下さい」
彼女の言葉に、遥はうんうんと相槌をうつ。
「久遠さんの瞳、嘘をつく眼に見えないもの。だから私も、疑ったりなんかしないよ?」
「恵美さん、遥さん...」
二人の言葉を聞き、久遠は決心した。
「僕はこれから、"ある人"を捜そうと思っています。その人は―――」
久遠は、包み隠すことなく彼女達に話した。捜そうとしている人は名前も居場所もわからない夢に現れる人物なのだが、夢は現実味を帯びていて、覚えていないだけで過去に起こっていた可能性があること。また、自分と彼にはなんらかの関係があり、彼を訪ねれば何か情報を得られるかもしれないということ。目的を持たずに飛び出してきた為、今はそれに賭けるしかないことも。それと自分には居場所がないから、しばらくここに居させてもらいたいということも。
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