第2話
青年と猫が去ったほんの数秒後に、黒いスーツを着た男達は現れた。
彼らはみな長身で屈強な見た目をしており、髪型は坊主から長髪まで様々だ。
「チッ...逃げられたか」
そのうちの一人、憤怒した坊主頭の男は近くにあったゴミ箱を、勢いよく蹴り飛ばした。それを尻目に、眼鏡を掛けた細身の男は口を開く。
「今から班を、追跡と報告の二つに分ける。追跡班は、直ちに目標(ターゲット)の居場所を突き止めろ。どんな手を使ってもいいが、間違っても殺すなよ?」
緋色の髪をした、リーダーらしき男はなおも冷静に命令する。
「報告班は念のためここらをくまなく調査し、結果を俺に言え。そう遠くには逃げられないはずだ、時間は掛けるなよ」
「「了解」」
男達は言われた通り分かれると、各自動きはじめる。
「俺は一足先に"マダム"に報告しに帰還する。貴様らは引き継ぎ調査しろ」
男は唇を噛み締め携帯を取り出すと、闇に溶けた。
『もしもし、"マダム"?飼っていた"猫"は消えました』
***
もうすっかり日が暮れ、立ち並ぶ街灯は煌々としていた。
「はぁ、はぁ...ここまで来れば....」
ずっと走りっぱなしだった彼は、たまたま発見した公園のベンチに座り込む。公園の時計を見ると、既に8時を回っていた。こんな時間だからか、辺りを見回しても人一人としていなかった。
「誰もいない...よね」
被っていたフードを下ろし、髪を軽くかきあげる。両耳に見えるピアスは彼の瞳とよく似た色をしており、街灯に照らされキラリと瞬いた。
「君のおかげだよ、ありがとう」
そう微笑すると、彼は足元の猫をそっと撫でた。
「今日はもう身動きとれないから、ここで過ごすしかないか...」
彼はブラウンのバッグから、クッキーのような食料を取り出した。それを手で半分に割って、片方を猫に渡す。
「食べる?...大丈夫、毒は入ってないから」
猫は最初は少し警戒していたが、顔を近づけて匂いを嗅ぎ、ようやく一口、二口と食べはじめた。
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