第12話

彼はまた、夢をみた。その瞳に映るのは、部屋を漁りなにかを探している人間と、倒れ込む金髪の少年の姿。...少年は気絶しているのか、ぴくりとも動かない。そんな彼の近くにいる人間は、こちらを振り向くとこう言った。こうなりたくなければ、"あれ"の在りかを吐くことだと。―――夢は、そこで終わった。


***


「―――っ!!」

目覚めるのが速いか、ガバッと彼は起き上がった。呼吸は乱れ、玉の汗が頬を伝う。

『あれ、もう朝...?』

カーテンの隙間からは柔らかな光が差し込み、その向こうからは小鳥の囀りが聞こえる。

『またあの夢だ...』

事の不思議さに驚く彼がふと下を見ると、いつの間にか毛布が掛けられていた。寝ている間に、二人のどちらかが掛けてくれたのだろうか。久遠は枕元にある本へ視線を移す。それはまるで、昨日の出来事などなかったかのように平然と鎮座していた。

『昨日急に眠くなったのは、もしかすると...』


難しい本を読むと眠くなるというが、あれは明らかに違った。...再び開いたらまた睡魔が現れるのだろうか。久遠の脳裏にはあの絵が、まだ鮮明に残っていた。

「夢の続きを見られたから良いけど―――」

そこまで言いかけ、彼はハッと思い出した。

『そうだ、夢!!』

忘れないうちにと彼は紙をカバンから取り出し、ペンを走らせる。

「金髪の人と僕は、何かを隠してて...それを、知らない人が欲しがっている?」

夢で言っていた、"あれ"と呼ばれる物の正体は定かではないが、身を挺してまで護る価値があるようだった。ペンを持つ手がぴたりと止まる。

「―――余計に謎が増えた気がする。結局彼の名前も分からず終いだし...」

夢は自在に操ることを出来ないのを理解しているつもりだが、知りたいことを知れずどうにも歯痒い。

「...とりあえず、下に行くかな」

一階では、人が活動している気配がする。

久遠は軽く伸びをしてから布団と毛布を片付け、軽く髪を整えて部屋を離れた。


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