夏休み編

第24話

 昨日のコスプレ大会の余韻がまだ抜けないまま、今日も学校へと向かう。

 昼休みになり、字見さんと愛羅さんのいる食堂へ向かうと、2人は既に席について、何か楽しそうに話している。


 昨日のあの光景が頭から離れない。字見さんのあの姿…いや、今はそれを考えるのはやめておこう。


 俺は2人の元へ向かい、声をかける。


「うっす」


「遅い!夏休みを有意義に過ごすための作戦会議なんだよ」


(計画…特に考えてなかったけど、せっかくの夏休みだし、何か楽しいことをしたいよな)


「うーん、夏休みももうすぐだし、何か特別なことをしたいよね」


 字見さんが考えていると、愛羅さんが待ってましたとばかりに、張りきって声を上げる。


「それなら、海に行くのはどう?今年は特に暑いし、海に行けば涼しいし、楽しいに決まってるっしょ!!」


 海…か。確かに、それは良い案かもしれない。だけど、問題は俺も字見さんもインドア派ってことだ。


「それいいね!海なんて久しぶりだし、行ってみたいな」


 字見さんが賛成の意を示す。

 嘘でしょ!?まさかこんなにノリノリだなんて…これは俺も覚悟を決めないといけないのか?


 字見さんが嬉しそうに微笑んでいる。普段はインドア派の彼女が、こんなに外に出たがるなんて、ちょっと意外だ。


「ま、まあ、海か…確かに今年は特に暑いし、悪くないかもな」


 俺がそう言うと、愛羅さんがさらにニヤニヤしながら畳みかけるように言った。


「決まりね!それじゃ、海で何をするか考えなきゃね。泳ぐのはもちろんだけど、バーベキューとか、砂浜で遊んだりとか、あと、もちろん日焼けも気をつけなきゃ!」


 気合の入りようが凄いな。


「でも、その前にさ…」


 愛羅さんがさらに声を潜めるようにして言った。


「水着を選ばなきゃね」


「そ、そうだね。海に行くなら水着が必要だもんね」


「俺持ってるか分からないな」


「あのわたし、実は水着ってあまり持ってなくて…だから、一緒に選びに行けたら嬉しいなって」


 愛羅さんがニヤニヤしながら俺の方を見る。


「女の子と一緒に水着選びなんて、普通の男の子なら興奮するんじゃない?」


 いや、それを言われると確かにそうだけど…


「俺もついていくのか?まあでも、2人が選んでるのを見守るだけだよ」


「ふーん、まあいいけど、ここなっちとあたしの水着姿、楽しみにしてなさいよ!」


 「楽しみにします」


 愛羅さんが笑顔で俺にウインクを投げかける。

コスプレも凄かったが、水着も楽しみだな。


 放課後、俺たちはそのまま街へと繰り出し、ショッピングモールに向かった。


 これから水着を選びに行くなんて、今までの人生でこんな経験したことないぞ。


 モールに到着すると、愛羅さんが先導して水着売り場へと向かう。


「ここならきっといいのが見つかるはず!」


 さすが愛羅さん、こういうところのセンスは抜群だな。


「ここなっちのサイズだと、大人の雰囲気なセクシーのばかりだから選ぶの大変そうー」


「うん、下着を選ぶ時もいっつも困ってるよ」


 巨乳ならではの悩みがあるのか。


「いっそのこと、ヒモのやつにしてみたら?」


「さすがにそれは痴女だと思うよ」


「悠斗はどう思う?」


 え?その話を俺に振るの!?本音は着てほしいけど…


「字見さんならなんでも似合うし、好きなやつでいいんじゃない?」


「本当は見たいくせに」


 そして各々水着を選ぶ。


「悠斗くん、この水着どうかな?」


 字見さんが手に取った水着は、胸元にフリフリが付いていて、控えめでありながらもどこか可愛らしいデザインの水着だった。


 彼女にぴったりだ。


「うん、すごく似合うと思うよ。シンプルだけど、字見さんの雰囲気に合ってる」


「ありがとう、わたしもこれ気に入ったかも」


 良かった、字見さんが気に入った水着が見つかって。

 愛羅さんも次々と水着を手に取っては、鏡の前で合わせてみる。


「こっちはどう?このデザイン、ちょっと大人っぽい感じしない?」


 愛羅さんが選んだのは、胸元がパッカンーと開いている少し大胆なデザインの水着だ。愛羅さんの明るい性格にぴったり合っている。

 確かに、愛羅さんらしいデザインだな。こういうのを堂々と着こなせるのが彼女の魅力だよな


「それもいいね、愛羅ちゃんには似合いそう」


 字見さんも愛羅さんの水着選びを手伝い始める。

 こんな風に2人が仲良くしている姿を見ていると、なんだかほっこりするな。


 俺は2人のやり取りを微笑ましく見守りながら、自分の水着選びも考え始めた。


 そういえば俺も水着を選ばないとな…でも、男の水着なんてどれも似たり寄ったりだし、あまり悩む必要はないか。


「悠斗くんも何かいいの見つかった?」


 字見さんがふとこちらを振り向いて声をかけてくる。


「まあ無難なのを選ぼうかなって思ってるよ。とくにこれとか」


「悠斗くんらしくていいと思うよ」


「じゃあこれで決まりかな?」


 愛羅さんが満足そうに言った。


「うん、これで準備万端だね!」


 字見さんも嬉しそうに頷く。


 こうしてみると、本当に2人ともそれぞれの個性に合った水着を選んでるんだな


「よし、それじゃあ海に行く計画を立てようか!」


 愛羅さんが意気込んで言う。

 俺たちはそのままカフェに移動し、ドリンクを注文してから、夏休みの計画を立て始めた。


 まずはいつ行くかを決めないとな。でも、2人がどんなプランを持っているのかも気になる。


「いつ頃がいいかな?」


 俺がそう聞くと、字見さんが少し考えてから答える。


「わたしはどの日でも大丈夫かな。ただ、土日は人が多そうだから、平日の方がいいかも」


 確かに、土日はどこも混んでるし、平日ならゆっくり楽しめるかもしれないな


「そうだね、平日ならゆっくりできそうだし、俺も平日がいいな」


 愛羅さんも頷く。


「じゃあ、平日のどこかにしよう!それで、海に行ったあとはどうする?どこか観光とかもしたい?」


 観光…それもいいかもしれないけど、どうせならもう少し特別なことをしたいよな


「うーん、海の近くに温泉とかあるところってないかな?海の後に温泉に入ってリラックスするのもいいと思うんだけど」


 俺が提案すると、字見さんの目が少し輝いたように見えた。


「温泉かあ、それいいかも。海で遊んだ後に温泉でゆっくりするなんて、最高のリフレッシュだね」


「いっそのこと宿泊はどう?」


「親に一回伝えてみないと分からないけど、それもいいな」


「じゃあ、海と温泉をメインにして、その後に何か観光でもしようか。近くに何か面白そうな場所があれば寄ってみるって感じで」


 愛羅さんがまとめるように言った。


 さすが愛羅さん、物事を効率よく進めるのが得意なんだな。


「それで決まりだね。楽しみだなあ」


 字見さんが笑顔でそう言う。


 楽しみだな。でも、その前に全力で楽しむには体力をつけておかないと、2人に負けちゃうかもしれないな。


 こうして俺たちは、夏休みの計画を完璧に仕上げた。

 海と温泉、そして観光。きっと素晴らしい夏の思い出が作れるだろう。


―――


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