第16話 字見視点

 今日は相談したいことがあり、神凪さんの教室におじゃますることに。

 教室に入り神凪さんの姿を探すと、神凪さんは机に腰掛けてスマホを見ていた。


 そしてわたしに気づくと、手招きをして声をかける。


「字見ちゃんこっちだよ」


 隣の席を借りて座る。


「急に相談したいってなにかあったん?」


「なにかあったわけじゃないけど、どうしても相談したくて」


「それなら、悠斗でも大丈夫じゃない?」


「悠斗くんは、ダメなの」


 神凪さんはすぐに察したのか、顔つきが変わる。


「もしかして悠斗関連の相談?」


「そう…」


 悠斗くんには絶対言えないこと。そう恋愛ごとの相談。


「悠斗くんのす、好きな人になりたい…です…」


 語尾に近づくにつれ力がなくなり、声がかすれてゆく。

 わたしは、口にするのが恥ずかしくて口を尖らせ、指どうしをくっつけもじもじとする。


「とうとう悠斗のこと好きと認めたなー!!」


「しーあまり大きな声で言わないで」


「青春してるなあ、このこのー」


 神凪さんはテンションが高まり抱き着いてくる。


「ギャルだからって恋愛に詳しいわけじゃないからね」


「でも、相談できるの神凪さんしかいないから」


「しょーがないな」


 頼られるのが嬉しいのか、神凪さんは照れ隠しのように頭をかく仕草を見せる。

 その姿を見て、神凪さんはギャルというより、頼れるお姉さんのような存在なのかもしれないと思った。


「悠斗に振り向いてもらいたいんでしょ?」


「そうだね」


「一つだけいい方法があるよ」


「ホント!どうすればいいの?」


「あまりにも効果絶大だから、悪用厳禁なんだけど」


 なにその裏技みたいな方法!?ゲームみたいで少しだけワクワクする。


「あまり大きな声で言えないから、耳かして」


 神凪さんのその真剣な面持ちに緊張が走る。

 なに?口外できないほどの極秘な方法なの?


 緊張がわたしにも伝わり、恐る恐る耳を近づける。


「色気で振り向かせればいいの…」


「え?今、なんて言いました?」


 思わず耳を離し、彼女の顔を見る。


 神凪さんはニヤリと笑いながら、再度ささやく。


「色気よ、字見ちゃん。男の子はそういうのに弱いんだから」


「えっ!えっちなことするの!?!?」


 ビックリして立ち上がり思わず大きな声を出してしまい、教室にいる人が一斉に視線を向ける。


「あっ、これは違くて…」


 と顔を真っ赤にしながら席に座る。

 は、恥ずかしい。反射的に大きな声をだしてしまったのを後悔する。


「ここだと人が多すぎるから移動しよっか」


 神凪さんの気づかいに感謝の言葉しか浮かばない。

 そして神凪さんに言われ、空き教室に移動する。


 教室に着くなり、早速質問をする。


「そ、それで具体的にどうすればいいの」


「なに?ちょっと興味津々なわけ?字見ちゃんってもしかして、むっつりなの?」


「違うよ!神凪さんから提案してきたんでしょ!!」


「冗談だって」


 わたしの反応が楽しいのか彼女はすぐからかう。


「じゃあ質問するけど、学校で起きるラッキースケベと言えば?」


「そんなこと急に言われても分からないよ」


「じゃあ字見ちゃんが好きなアニメで考えてみて」


 瞬時にアニメの光景を浮かべる。


「あっそれなら分かるかも」


「ズバりそれは?」


「パンチラです!!」


「そう正解!」


 こんなときにアニメの知識が役に立つとは。

 でも、あまり嬉しくない。


「意図的にパンツ見せるのってただの変態じゃない?」


 神凪さんは、わたしの言葉を聞いてクスクスと笑う。


「まぁ、確かにそのままじゃ変態だね。でも、ちょっとした演出で自然に見せるのがポイント」


 そう言われてもピンとこない。

 これが女子力の差なの?


「まずは、男の視点で考えてみて。あたしの格好をみてどこにドキッとすると思う?」


 そう言って、全身の体を見せる様に広げ、くるっと回った。

 その時にふわっとスカートが揺れた。


「スカートが短いところ?」


「そうそう、そういうこと」


 神凪さんは、自分の足元を指差す。その視線に従って目を向けると、スカートの裾が少しだけ上がり、彼女の太ももがチラリと見える。


「たとえば、このくらいのチラリズム。それが男の子にはたまらないんだよ」


「そ、そうなんだ…でも、わたしがやっても上手くいくのかな…」


「もちろん!字見ちゃんだって、やればできるよ。大事なのは自然にやること。無理してやろうとしないで、普段の動きの中でさりげなくね」


「なるほど勉強になります!!」


 しっかりメモを取り、神凪さんのアドバイスを心に刻む。


「て、ことで字見ちゃんもスカート短くしよっか」


「早速やるの?」


「まずは試してみないと」


 言われるがままにスカートを捲り、長さを調整する。


「これくらい?」


「全然ダメだね。もっとグイっと見せないと」


「は、恥ずかしいよ」


「はいはい、じゃああたしがやりますよ」


 そう言って勝手にわたしのスカートの長さを調整する。


「うん、字見ちゃんならこんくらいかな」


 スカートの長さが膝より上にあり、いつもより風を感じ落ち着かない。


「ホントにこれでいいの?凄く恥ずかしいというかスースーするよ…」


「バッチリだよ!ほら可愛い」


 写真を撮りそれをわたしに見せる。


「かわいい?のかな」


「明日、その格好を悠斗に見せつけちゃえ!そうしたらいちころよ!!」


 こうして、わたしの「色気作戦」が始まることになった。まだまだ不安は残るけれど、神凪さんのアドバイスを信じて、実行するしかない。

 悠斗くんがわたしをどう思うか、それはわからないけど、やってみないことには始まらない。


 ―――


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