第29話
さて、準備も終わり、いよいよ遊ぶ時間だ。
愛羅さんと字見さんもそれぞれ水着姿で準備万端の状態。俺もすっかりテンションが上がってきた。
そして、俺たちはようやく海に足を踏み入れた。
水は思ったよりも冷たくて、ちょっとビクッとしちゃうけど、それでも夏の海ってやつはやっぱり最高だ。
インドア派の俺だがこれにはさすがに、認めざるを得ない。
「あ~生き返る~」
字見さんは幸せそうに、浮き輪に乗りプカプカと浮かぶ。
それとは対照的に愛羅さんは、海にド派手に飛び込む。
「気持ちい!まじ最高!!」
飛び込みの勢いで波ができ近くにいた、字見さんがひっくり返る。
「おいおい、はしゃぎすぎだぞ」
字見さんを起こしてあげようと手を差し伸べると、立ち上がりと同時に水をかけられる。
「不意打ちは卑怯だろ!」
「不意打ちは最強、ゲームの常識」
俺も負けじと水をかけ返す。
「ふふ、楽しそうだね」と愛羅さんが笑う。
彼女にも参加しないかと誘おうとしたその瞬間、愛羅さんが「おりゃ!」とノリノリで参戦する。
突然の攻撃に字見さんは「きゃっ!」と驚きながらも、可愛らしい声を上げる。
「もう、愛羅ちゃん、やめてよ!」と顔を赤らめながら抗議する字見さんだが、その姿がまたなんとも愛らしい。
俺はそんな2人を見ながら、心の中で「幸せってこういう瞬間だよな…」としみじみ感じていた。
しかし、ここで予想外のハプニングが起こる。
字見さんがバランスを崩し、思いっきり俺の方に倒れ込んできたのだ。
「うわっ!」
ドンッ!と勢いよくぶつかってきた字見さん。しかも、倒れた勢いで俺も一緒に海に引きずり込まれる。
お互いにずぶ濡れになりながら、何とか起き上がると…まさかの事態に。
「ごめんね、悠斗くん、大丈夫?」と心配そうに聞いてくる字見さんだが、俺の視線はどうしても彼女の胸元に吸い寄せられる。
なんと、彼女の水着がずれて、あらぬ方向に…。
「あの、字見さん…見えてます」
指をさして伝えると、字見さんは自分の体に視線を移し確認し、一気に顔が真っ赤になった。
「きゃぁぁぁ!!」
字見さんは恥ずかしさのあまり、俺に背中を向けて慌てて水着を直す。
俺は「見てない見てない!」と必死に言い訳をするが、どうしてもチラッと見えてしまったのは事実だ。
恥ずかしさから逃げるためか、字見さんは「ブクブク」と底に沈んでいく。
「大丈夫だって、日差しで影が出来ててちゃんと見えてなかったから…多分」
「多分って絶対見たでしょ」
愛羅さんが冷静に突っ込む。
そのあとは、用意してきたビーチボールなどで遊んだりした。
すると、海里さんが波打ち際まで近づいてきた。
「BBQの準備終わったから、いつでも食べていいよ」
どうやらバーベキューの準備が終わったようだ。ちょうどいいタイミングだ。
海で遊びすぎてエネルギーも使い果たしてる。もうそろそろお昼にしないとな。
「お腹減ったな。そろそろ海から上がるか」
俺と字見さんは海から上がる。
「けど、ちょっとその前にシャワー浴びたいな」
字見さんが困った顔をしながら、髪をかき上げる。
確かに、海水でべたべたになってる。
「そうだな」
俺は字見さんと一緒にシャワー室に向かうことにした。愛羅さんは「少し涼んでから行くね」と海里さんとベンチに腰をかけている。
2人でシャワー室に向かう途中、突然俺の耳に衝撃の言葉が聞こえてきた。
「この人、おっぱいでっか!」
ん?今、なんて言った?俺が思わず声の方を向くと、2人の少年が目を丸くして字見さんを指差していた。
「お母さんよりでっかいよ!」
おいおい。いくら子どもとはいえ、それはアウトだよ。
「あ、あのね…」
字見さんは明らかに困惑している。そりゃそうだよな。どうやって反応すればいいんだ、こんなシチュエーション?
俺が注意しようとして口を開きかけた瞬間、突然背後から別の声が聞こえてきた。
「君らが興味持つにはまだ早いよ」
少年たちの背後に愛羅さんが立っていて、にやりと笑っている。あの笑顔、怖いぞ…!
「うわ!こっちの姉ちゃんはおっぱいもケツもバカでっかいぞ!!」
少年たちの、まさかの追加コメント!
それに「ケツも」って言ったよな?まさか、愛羅さんを相手にそんなこと言っちゃうなんて…
「ほう、失礼なガキんちょには教育が必要だね。お姉さんがあんたたちを食べちゃうぞ!!」
愛羅さんが脅しをかけると、少年たちは怯えた顔で一瞬だけ立ち尽くしたが、「逃げろー!!」と叫びながら砂浜を一目散に走り去っていった。
あの年で字見さんと愛羅さんの体を見たら、性癖が歪んじゃうよ。
俺は思わず心の中で呟いてしまった。
「胸はともかく、お尻はデカくないし!!」
愛羅さんが少年たちの言葉に対して反論する。
俺は「ホントか?」と思いながら愛羅さんのお尻を見る。
「元気な子たちだったね…」
字見さんが困惑しながらぽつりと言った。
「そうだな…まあ、将来のためにいい経験だったんじゃないか?」
俺は適当にごまかしながら返事をするが、字見さんはまだ戸惑っている様子だ。
「あー、髪がべたべたするし早くシャワー浴びたいよー」
愛羅さんはそう言って、駆け足でシャワー室に向かった。
この2人がいるとホント飽きることがないな。
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