第28話

「そういえば、宿泊代などのお金の話はどうなったんだ?愛羅さんは解決したって言ってたけど?」


 最近、何かと出費が多くてちょっと不安なんだよな。でも、どうやって解決したのか気になる。

 まさか、借金とかしてないよな?夜な夜な、変なことしてたりして…。


「まさかとは思うけど、夜のお店で働いたとかじゃないよな?」


「してないわ!!まだ処女だし!!」


 ――えっ!?


 愛羅さんの迫真の声に、海里さんを除いた全員がシーンとなる。

 まさかの「処女」発言に、字見さんも顔が赤くなる。


「まあ、さっきのは気にしないで。でも、お金のことはね、ちょっと特別なバイトをしただけだから、心配しないで」


 特別なバイト…?なんだそれ?


「特別なバイトって…一体何をやったんだ?」


「わたしが、全額負担したんだよ。愛羅が家の手伝いをすることを条件に」


「えっ、まじですか。ありがとうございます!!」


 俺と字見さんは、全力で感謝を伝える。いや、本当にありがたい。


「こいつに泣きつかれて宿泊代にBBQセットのレンタル料金に、車のレンタル。その他もろもろ結構高くついたぞ」


「ホント感謝しかありません!」


「あんたら全員が、心の奥底から楽しかったと思えるようなものにしないと、わたしが損した気分になるから全力で楽しめよ」


「「はい!!」」


 3人綺麗に揃った返事をした。絶対に楽しまないとな。


 ―――


「海だー!!」


「わあ、綺麗だね」


 視界いっぱいに広がる海に、愛羅さんと字見さんがテンションを上げてる。ああ、この瞬間を待ってたんだよな。


「わたしは貴重品とか旅館に置いてくるから」


「あー運転疲れた」と海里さんはダルそうに言いながら、再び車を動かし、荷物を宿へと運んでいく。


「じゃあ、俺たちは楽しむための準備するか」


「そうだね」


 俺たちはシートを広げたり、テントを組み立てたりしながら、着々と準備を進めていく。


「悠斗くん、こっちのロープ、もっと強く引っ張ってくれる?」


 字見さんが力の入った表情で、ロープを引っ張るが全然張らない。

「うーん」と力を込めてる割には微動だにせず、可愛い声だけが聞こえる。


「任せて、今やる」


 俺はロープをしっかりと引っ張り、テントの骨組みを固定する。力を込めてぐっと締めると、テントがしっかりと形を保った。


「これで大丈夫かな?」


「うん、ありがとう。これで安心だね」


「よし、次はこのシートを広げるぞ」


 シートを手に取り、砂浜の上に広げてみた。今日は風が少し強いから、端をしっかり固定しないと。


「愛羅ちゃん、こっちの角を押さえてくれる?」


「うん、わかった」


 協力し合って、シートをしっかりと地面に固定していく。よし、これでほぼ準備は終わったかな。


「おーい、進んでる?」


 海里さんが、BBQセットを抱えて戻ってきた。


「お疲れ様です!!」


「そろそろ海、楽しみたいでしょ?あとはわたしがやるから」


「あざす」


「ここなっち、そろそろ水着に着替えっか」


 愛羅さんが字見さんに声をかけると、字見さんは少し緊張した様子でうなずいた。


「う、うん」


 2人は車の方へ向かっていく。俺はその様子を見送りながら、しばし準備したイスに座って待つことにした。

 海の波音が心地よく耳に響いて、自然と気持ちがリラックスしていく。


「あれ?あの子らは?」


 海里さんは俺の横に座り休憩をする。


「車で着替えるそうです。海に入るのは2人が着替えてくるのを待つだけかな」


「お姉さんも水着になっちゃおうかな」


「そういえば、海里さんってそろそろ三十路に…」


「はーいそれ以上言ったら、あんたをBBQの素材にするわよ」


「すんません」


「普段見せない姿を見るのって、特別感があるでしょ?それにわたしは、いつ体を見られてもいいように毎日走ってるのよ!!」


 海里さんの言葉に、俺は頷いた。

 確かに、普段とは違う一面を見られるのは、特別な体験だ。それに、字見さんの水着姿…なんだか期待してしまう。


「悠斗!!準備できたよー」


 声に反応して振り返ると、愛羅さんが自信満々にポーズを取り、俺に見せてきた。

 ダイナマイトボディを収めるには肌面積が少ない水着…テレビだったらセクシーな効果音がつきそうな見た目だ。


「おお、似合ってるよ!まさに海の女王って感じだな」


「でしょでしょ!」


 愛羅さんが満足そうに笑う。

 そして次に俺の視線は、その後ろに立っている字見さんに向かっていく。


 字見さんのドスケベボディに反して、フリフリの可愛い水着。このギャップがたまらん。


「字見さんも…すごく似合ってるよ」


 俺がそう言うと、字見さんは顔を赤くして、小さくお礼を言った。


「ありがとう…悠斗くん。でも、ちょっと恥ずかしいかも」


 いや、3人で買いに行った時から気になってたけど、実際に着てるのを見ると破壊力やばいな。

 見てるだけで体が熱くなる。


「それじゃあ、日焼け止め塗ろうか!今日は日差しが強いから、しっかり塗らないとね」


「うん、そうだね」


「わたしは少し肌を焼きたいから、調整して塗るけど、ここなっちはどうする?」


「わたしは…あんまり焼きたくないから、しっかり塗ってもらおうかな」


「オッケー、任せて!」


 愛羅さんは日焼け止めのボトルを手に取り、手のひらに適量を出して、字見さんの背中に塗り始めた。

 字見さんは少し驚いた様子で、ピクリと肩を震わせている。


「ひゃっ…!あ、ごめんね。ちょっと冷たくてびっくりしただけだから…」


 照れ笑いを浮かべる字見さん。

 その声が少し色っぽくて、見ている俺は思わずドキッとしてしまう。


「ふふ、こういうのって、なんか女同士でもちょっとドキドキするよね。でも、安心して。ちゃんと丁寧に塗ってあげるから」


「う、うん。ありがとう、愛羅ちゃん…」


「お腹も塗ってあげるよ」


 そう言ってくすぐるように触る。


「もう!愛羅ちゃんくすぐったいよ」


 女子同士のイチャイチャを見ながら、1人寂しく塗っていると俺を覆うように目の間に影が出来た。

 振り返ると、海里さんがいつの間にか水着に着替えてこちらに来ていた。彼女はニヤリと笑って、俺に向かって言った。


「羨ましそうに見るわね、それならわたしの背中に塗ってもいいわよ?」


 その言葉に、俺は一瞬戸惑ったが、正直な気持ちとして女性の体に触れることも滅多にないし、しかも大人のお姉さん!!愛羅さんを遥かに超えるセクシーボディに惹かれてしまう。


 欲望に負けた俺は「お願いします!」と返事し、日焼け止めを手に取って彼女の背中に塗り始めた。

 海里さんの肌は柔らかく、かつ引き締まっていて、その感触にドキドキしながらも、丁寧に塗り広げていく。


「ふふ、悪くないわね。思ったより優しい手つきで、ちょっと感心したわ」


 海里さんはリラックスした表情を浮かべていた。

 俺は幸福感に包まれいたが、同時に視線を感じた。


「うわーあいつ、スケベ顔になってるよ!」


「塗りたかったら、最初から言ってくれればよかったのに。わたしたちだって、別に嫌がらないよ?」


「え、いや、その、違うんだ!別にやりたかったわけじゃ…」


 俺は必死に弁明しようとするが、海里さんの肌の感触を楽しんでいる現状証拠があるので、全く信じてもらえなかった。


 ―――

 最後までお読みいただきありがとうございます!最新話から出来る作品の★評価、感想などをいただけますと、モチベが上がるのでよろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る