第27話

 今日は約束の日


「ふと思ったんだけど、海を楽しんだあと旅館に泊まるんだよな」


「そうだね。友達同士で軽い旅行みたいで楽しみだね」


 俺から、疑問をぶつけていいのか?

 とても大事な部分が抜け落ちていることを。


「旅館の予約は愛羅さんがしたんだよな?」


「そうだよ」


 なぜ疑問に思っていないのか。男1人に女性2人でどう泊まるんだ?

 事前にあれこれ聞いとくべきだった。愛羅さんが来たら聞いてみるか。


「ちょっと暑いけど晴れてよかったね」


「海いけばきっと涼しいよ」


「楽しみだな~」


 セミの声が響く中、俺と字見さんは、愛羅さんの到着を待つ。


 数分後、時間ぎりぎりに車が2人の前に止まる。


「おまたせ!!」


 元気よく車から飛び出してきたのは、愛羅さんだった。


「おはよう、愛羅ちゃん」


「おっすー2人とも」


「集合場所、駅じゃなくてよかったのか?ここからだとちょっと歩くぞ」


「心配いらないよ」


 俺の心配を払拭するかのように、運手席のドアが開く。


「久しぶりだね悠斗」


 運転席から降りてきたのは、愛羅さんの姉である海里うみりさんであった。

 見事までのボン!キュッ!ボン!!のグラマラスなお姉さんである。


「お久しぶりです」


「なに改まってるのよ!このこの~」


 俺をヘッドロックするかのように掴み、体を寄せる。


「海里さん、やばいって!!」


「昔はこうやってじゃれ合うと喜んでたじゃない」


「それは昔の話です!!」


 あの時の俺はまだピュアだったが、今は違う。

 海里さんのスライムのように柔らかい爆乳に顔が沈み、全身を思春期に浸かっている俺の理性は爆発寸前だった。


 名残り惜しさを嚙みしめて、なんとか抜け出す。

 危なかった。友人どころか公衆の面前で醜態を晒すところだった。


 それにしても、すげぇ大人の匂いがしたなぁ…

 むせかえるくらいのエロい匂いがした。


 俺と海里さんのやりとりを、字見さんはポカーンとしながら見ていた。


「ここなっちは会うの初めてだよね。あたしの姉だよ」


「いえーい!愛羅の姉の海里でーす!!」


 全力でピースをするが字見さんとのテンションの落差がすごい。


「字見恋夏です。海里さんよろしくお願いします」


「気軽に海里ちゃんか、海里お姉さんと呼んで」


「この姉にしてこの妹って感じですね」


 字見さんは2人を見比べる。


 ほんとこの人たちは危険すぎる。

 美人姉妹どころか、思春期ハンターのどエロ姉妹だからな。


「それにしても、どうして海里さんがここに」


「あれ?愛羅から聞いてなかった?今日は運転兼、保護者として同行するのよ」


「さあさあ乗った乗った」と言い、海里さんは全員を車に乗せる。


「そういえば、宿泊先について聞きたいことがあるんだけど?」


 助手席に座る愛羅さんに、心に引っかかっていたことを聞く


「愛羅~、全然この子たちに話してないでしょ?」


 運転しながら海里さんがツッコミを入れる。


「ご、ごめんて海姉。聞きたいことってなに?」


 愛羅さんは少し焦りながら振り向く。


「何室予約した?」


 これが一番重要な質問だ。


「ふたつだけど?何か心配事でもあった?」


 愛羅さんが首をかしげる。


「いや、もう大丈夫。それなら安心した」


 俺はほっと胸を撫で下ろす。もし1部屋だけだったら、どうしようかと本気で悩んでいた。


「ふーん、変なの」


 愛羅さんは不思議そうに俺を見るけど、まあ仕方ない。


 よかった…ほんとによかった。2部屋あるなら安心だ。もし、字見さんとこの姉妹と一緒に寝たら、たぶん、いや確実に、意識しまくって寝れなくなるだろう。この3人の破壊力…一緒にいたらもう、俺はどこまで持つのか分からない。


「そういえば、悠ちゃん」


「その呼び方恥ずかしいので、やめてください」


「愛羅が寂しがってたよ」


「え?」


「小っちゃいころは一緒に遊んでたのに、中学のころから疎遠になったって」


海姉うみねぇ!それ言っちゃダメ!!」


「それが最近急に元気になったと思ったら、悠斗とまた友達になれたってはしゃいで」


 愛羅さんは珍しく顔を真っ赤にし、焦りを見せる。

 口を塞ごうと手を近づけるが


「はーい、今わたし運転中でーす。もし事故ったらあんたの責任だよ」


「んん!!ズルい海姉!!」


 愛羅さんは怒り心頭だが、振り返って俺の様子をうかがう。


「なんだよ寂しかったのかよw遊びにでも誘えばよかったのに」


「何度もしたわー!!何回も話しかけたわ!!」


「いやだってあれは、ギャル友何人も引き連れてて怖かったんだよ。個人的に誘えば多分一回ぐらいは遊んだりしたと思うぞ」


「悠斗、あんたももう少し愛羅に優しくしてやりなさいよ。ほら、今の愛羅の顔見てみなさい」


「も、もういいから!海姉、ほんとにいい加減にしてよ!」


 愛羅さんは突けばプシューと音を立てて破裂しそうなくらい、頬が膨れいた。


 その様子を見て海里さんは豪快に笑いながら、そのまま運転を続ける。


―――


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