第20話

『いま字見ちゃんとカフェにいるんだけど、悠斗もくる?』


 日直の仕事を終えて職員室から戻ってきてスマホを確認すると、メッセージが届いていた。

 どうやら2人は、カフェにいるらしい。どうしようかな?


 と、悩んでいる間に教えてもらったカフェにたどり着いていた。

 結局きてしまった。まあ、まったりするのも悪くないか。


 店内に入って見渡すと、奥のほうの席に座っているのが見えた


「用事があって遅れた」


「遅いよ悠斗」


「わりぃ」


「それより聞いたよー」


「聞いたって、何を?」


 そう聞き返すと、ニヤニヤとした顔つきになる。

 こういうときは、大概いじりがいのあるものを見つけた時だ。


「字見ちゃんのパンツ見て興奮してたんだってね」


 やっぱり、その話か…


「違う、あれは不可抗力だ」


 俺は慌てて弁解しようとするが、愛羅はますます面白がっている様子だ。


「いやいや、字見ちゃんからちゃんと聞いたよ?悠斗ったら、目が釘付けだったんでしょ?」


 俺は必死に釈明しようとするが、愛羅は全く聞く耳を持たない。


「それで、どうだった?字見ちゃんのパンツ」


「えっそれ聞くの!?」


 字見さんは驚きの声が上げる。


「その話はわたしに、恥ずかしさのダメージがくるから」


 字見さんが恥ずかしそうに愛羅を制止しようとするが、愛羅はなおさら楽しそうに笑っている。


「だって、こんな面白い話、放っておけるわけないでしょ!」


「いやーどうだったかな、一瞬のことだったし記憶が曖昧だな」


 なんとかこの場を切り抜けるための、言い訳を考える。

 さすがに本人を前にパンツの感想はアウトでしょ。


「うまく逃げたつもり?」


「本当に覚えてません!!」


「こんな可愛い字見ちゃんのパンツを、忘れることってある?」


 字見さんのほっぺをポムと触りながら、可愛さを強調する。


 それでも俺は見てないと否定する。

 そもそも、字見さんと約束したから言えない。


「あーあ、せっかくオシャレしてきていざ見られてもいいように、きっと気合いを入れたパンツだっただろうに…字見ちゃんの努力が無駄になっちゃうな~」


「そ、そんなことないよ!神凪ちゃんよ言葉に惑わされないで」


「で、実際どうだったの?正直に言ってみ」


「そ、それは…」


 くっ…口が勝手に動く。字見さんに嫌われるようなことは言いたくないハズなのに。


「…どエロかった、です…」


「そんなに凄かったんだ!!あたしも見たかったなあ」


「ちょっと、2人ともやめてよ」


「どう、エロかったの?」


「どうって、言われても…大人の雰囲気を感じつつ引き込まれるような、黒色だったことしか分からないな」


「めっちゃ詳細に覚えてるじゃん!」


 愛羅さんは、腹を抑えて笑いだす。

 だって、あんなドスケベなもの見せられたんだから、忘れるほうが失礼でしょ。


「たぶん黒のレースだな。字見ちゃんいいセンスしてるじゃん!!」


 愛羅がますます興奮気味に字見さんを褒めると、字見さんうつむきながら顔を赤く染める。


「もう、パンツの話はやめよ……」


 ―――


「えー好きなタイプをゲームのキャラで答えたの!?」


 話は変わり、いま話されている話題は好きなタイプについて。


「そこでゲームやアニメのキャラを持ち込むのは、空気読めてなさすぎでしょ」


「俺もうすうす思っていました」


「わたしは悠斗くんらしくていいと思ったよ」


 字見さんが優しい声でフォローしてくれる。


「字見ちゃん、やさしいね~」


 愛羅が少し感心した様子で続ける。


「でもさ、そのキャラに対して本気で好きって思ってるなら、いっそのこと字見ちゃんにそのキャラのコスプレしてもらったらどう?」


「えっ…わ、わたしがコスプレ!?」


 突然の提案に、字見さんは驚いた顔を見せる。

 確かに、字見さんがあのキャラの衣装を着たら…なんて、想像しただけで頭がクラクラする。


「悠斗だって好きなタイプで上げるくらいなんだし、それが三次元に飛び出して来たら嬉しいでしょ」


「ま、まあ、確かに…」


 愛羅さんの言葉に、俺は曖昧に頷くしかない。

 頭の中で字見さんがそのキャラのコスプレをしている姿がちらついて、正直言ってかなり見てみたい気もする。


「でしょ?字見ちゃんも、今までにない新しい自分を発見できるかもしれないしさ!」


「でも…そんな、わたしに似合うかな?」


 字見さんは不安そうに眉を寄せるが、愛羅さんはすかさずニヤリと笑って、


「似合うに決まってるでしょ!あたしがしっかりサポートするから安心して!」


 その言葉に、字見さんは少しだけ安心した様子で、小さく頷く。


「じゃあ…やってみようかな」


 字見さんが小さな声で言ったその言葉に、俺は心の中で歓喜の声を上げた。


「決まりね!じゃあ、次の週末にでもコスプレショップに行って、衣装を見に行こうよ」


 ―――


 最後までお読みいただきありがとうございます!最新話から出来る作品の★評価、感想などをいただけますと、モチベが上がるのでよろしくお願いします!

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