第4話
「いきなり学校ではハードルが高いよ。みんなにどう思われるか不安だし…」
「そんなことないって。実際にここに可愛いと思った人間がいるんだから、変だと感じる人はいないよ」
「うーん…恥ずかしいけど…わ、わかった。明日、学校に行くときコンタクトにしてみるね」
俺に可愛いと言われすぎて、自己肯定感が上がったのか、なんとか承諾してくれた。
その瞬間、俺は心の中でガッツポーズをした。
「よし、じゃあ明日が楽しみだな!」
そう言いながら、俺はわざと軽い調子で笑ってみせたが、実は内心かなり興奮していた。
まるでRPGのレベルアップを目の当たりにしたような気分だ。
失礼かもしれないが、今までの地味キャラだと思われていた字見さんが、可愛さのスキルを覚えていく過程を俺が見守ることになるなんて、なんだかワクワクして仕方がない。
「なんだが、ゲームみたいだね。徐々に変化していく過程が」
字見さんがぽつりとそう呟いた。その言葉に、俺は思わず笑みをこぼす。
俺と同じことを考えていたなんて、ちょっとした驚きだ。
「そうだね、まさにレベルアップしていく感じだよ。明日は新しいスキルを試す第一歩ってところかな?」
「うん…なんか、そう考えるとちょっと楽しみかも」
不安が払拭されたのか、字見さんの顔から緊張が少しずつほぐれていく。
「ねえ、悠斗くん…」
「ん?どうした」
「これからも…いろいろ相談することがあるかもしれないから…連絡先、交換しませんか?」
「そういえば、連絡先しらなかったな」
字見さんは、スマホを差し出すように見せる。
俺はすぐにスマホを取り出し、QRコードを読み込む。
「あ、ありがとう。悠斗くん」
俺は試しに、『よろしく』とスタンプを送ると、字見さんのスマホが震え彼女は画面を確認しながら、嬉しそうにニマニマと笑う。
「随分と嬉しそうだな」
「うん、これでいつでも連絡が取れるようになったからね」
まあ、可愛いさをレベルアップさせるほかに、もともとゲームの繋がりがあるし、連絡先しってるほうが都合がいいしな。
彼女は上機嫌でスマホの画面を眺めているので、こちらが見ていることに気付いていない。
「それにしても、なんか不思議だな」
「なにが?」
「いや、こうやってリアルで会って、直接連絡先を交換するなんて、なんか変な感じがするな。ゲームで知り合った友達が、実際に会ったら同じクラスの子だったなんて、普通は考えられないじゃん?」
「確かに…それはそうだね。でも、なんだか運命みたいなものを感じるかも」
字見さんがそう言って、少しだけ照れくさそうに視線を逸らした。その様子に、俺も同意する。
「俺たちがこうして出会えたのも、何かの縁なのかもね」
字見さんは少し照れながらも、嬉しそうに頷く。
これからも彼女とこうして関わっていけるのかと思うと、なんだか胸が高鳴る。
まるで、ゲームの新しいクエストが始まる瞬間のようなワクワク感がある。
「あ、ゲームで思い出したけど、限定アイテムのこと忘れてた」
「ほんとだ!急いで行かないと!!」
「でも、発売時間から結構時間たってるし他の人に買われてるかも」
「ごめん、わたしのせいで」
「また、今度買いに行けば大丈夫だろ」
「え、また一緒に買いに行ってくれるの?」
「当たり前だろ?もともとその予定だったんだから」
字見さんはその言葉に安堵したように微笑んだ。
「じゃあ、次回こそはしっかり準備して、限定アイテムを手に入れような!」
俺がそう言うと、字見さんは力強く頷いた。
「うん、次は絶対に手に入れる」
―――
「じゃあ、また明日学校でね」
「うん、また明日」
俺たちはそう言い合い、別れた。
その日の夜、ベッドに入る前にスマホを確認すると、字見さんから一言「今日はありがとう」とメッセージが届いていた。
それだけの言葉だったが、なんだか心が温かくなった。
俺はすぐに「こちらこそ」と返信した。
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