第37話
「どこに行くとか決まってるのか?」
「わたしは、街中の景色を楽しみたいかな」
「あたしは何か食べたい」
「俺は…決まっていない」
昨日の夜にでも考えておくべきだった。
疲れてたから明日のことを全く気にしてなかった。
愛羅さんは「うーん」と悩み考え込む。
すると、ポンっと手を叩き何か思いつたようだ。
「まずはそれぞれ楽しんでから、最後に合流するのはどう?」
「いいと思う」
字見さんがそれに同意する。
「合流場所はここでいいか?」
「そうだね」
愛羅さんの提案により、俺たちはそれぞれ行きたい場所へ散らばることに決まった。
―――
「それにしても暇だな」
それぞれ楽しむにしても一つ問題がある。それは、俺には特に目的地がないってことだ。
みんな、あれこれ楽しみにしているだろうに、俺はどうやって時間を潰そうか…。
「前の俺なら1人でも楽しめたんだろうけど、今はなんか迷うよな…」
考えながら、観光地の通りをなんとなく歩く。
昔は、1人でのんびり過ごすことに何の違和感もなかったけど、今は2人は何してるんだろうな、なんて考え始めてしまう。
観光地だってのに、俺がしているのは時間つぶしに過ぎない。これでいいのか?
目移りすればするほど、目的が決まらなくなる。
そんなとき、愛羅さんが店の前で何やら悩んだ様子で立ち止まっているのを発見する。
「どうしたの?」
声をかけてみると、愛羅さんは驚いたように振り返った。
「えっ、悠斗?なんでいるの?」
「いや、特に目的もなく歩いてたら、たまたまここにたどり着いたんだよ」
愛羅さんの目線の先を追うと、そこにはソフトクリームの看板。
ああ、これはまた何か迷っているな、俺にはわかる。俺は愛羅さんの悩みを察する。
「買わないの?」
分かっていながら軽く聞いてみる。
「だってさ、買ったらお金なくなるんだもん」
彼女は若干拗ねたように答える。
海里さんにきつく言われたから、葛藤しているようだ。
「そのくらいなら大丈夫じゃないか?」
「いや、後にもっといいものがあるかもしれないでしょ?で、あの時ソフトクリームなんて買わなきゃって後悔するかもしれないじゃん」
いや、さすがにそれは心配しすぎじゃないか?と俺は思いながらも、海里さんに「絶対奢るなよ」と釘を刺されているから、ここで甘やかすわけにもいかない。
だが、この悩む姿を見ているとさすがにかわいそうになってきた。
「すみません、チョコ味と抹茶味ください」
愛羅さんが、羨ましそうに俺を見つめている。その目は、まるで子犬のようだ。
「あー2つ買ったはいいけど、思ったより多いな…そういえば、抹茶好きだったよな?食べる?」
俺がわざとらしく言うと、愛羅さんの顔がみるみる笑顔に変わっていく。
「マジで!!悠斗様ありがとうございます!!」
愛羅は大喜びし、まるで子どものように目を輝かせて抹茶のソフトクリームを受け取った。
2人で近くのベンチに座り、ソフトクリームを食べ始める。
「愛羅さんはこのあとどうするの?」
愛羅さんのほうに顔を向けると、彼女は不満そうな表情になってこちらを見つめていた。なんか俺したっけ?むしろ喜ばれるようなことをしたような?
「ねえ、悠斗…今さらなんだけどさ、愛羅さんじゃなくて、そろそろ『愛羅』って呼んでくれない?」
「いや、慣れちゃったから呼び捨ては違和感あるんだよな…」
「じゃあ、今から慣れればいいじゃん。3、2、1、はい呼び捨てで呼んで!!」
突然カウントダウンを始める。こうなったら言わざる負えない。
「え、あ、愛羅…?」
「…うん、それでよし」
愛羅さんは嬉しそうに小さく頷いていた。
「なんだよ、その反応」
「思ったより、いい響きだった」
愛羅さんはニヤニヤしながらと答える。
前にも、さん付けで呼ぶのに不満を漏らしていたし、よっぽど嫌だったんだな。
「もしかして、これからも呼び捨てにしないといけない?」
「うん、お願いね」
「なんか恥ずかしいな」
彼女はニッコリと笑い、満足しているようだ。
慣れなくてちょっと恥ずかしいが、本人が喜んでいるならいいか。
愛羅が美味しそうに食べている姿を見てると、こっちもなんだか嬉しくなる。
なんだか微笑ましくなる。自分に妹がいたらこんな気分なのかな?と考える。
さて、次は何をしようかな?今は個人の時間だし、そろそろ別行動したほうがいいかな?
「じゃあ、俺はその辺をぶらついてくるよ。愛羅も無駄遣いしないで楽しめよ」
「うん!集合時間に遅れないようにね!」
退屈だった時間が少しだけ楽しい時間に変わった。
間違って修正前のほうを投稿していたので再投稿しました。
―――
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