第31話

 BBQが終わり、満足感と共に一同で片づけに取り掛かる。

 満腹すぎて動くのが面倒だが、俺も重い腰を上げ、散らばったゴミや空の皿を片付け始める。


 やっぱりこういうとき、愛羅さんの行動力は助かるな。笑顔でさっさと動いて、周りに指示を出してくれる。


「おーい、悠斗そっちのテーブルもお願い!」


「お、おう、今行くよ!」


 俺は急いでテーブルの片付けに向かう。

 気づけばあっという間に片づけが進み、ほぼ終了。みんなで協力した結果だな。


「よし、片付け終わったことだし、宿に向かうか」


 海里さんの声で車に乗り、宿に向かう。

 旅館に着くなり愛羅さんが、テンションを上げ口を開く。


「すっごい綺麗な場所じゃん!!」


「どんだけ元気余ってるんだよ。俺なんかクタクタで倒れそうだよ」


「こんな綺麗な景色付きの旅館なら、疲れとか吹き飛ぶでしょ」


「見て見ろよ、字見さんなんか足がガクガクだぞ」


 インドア派の俺らは、疲労であらゆる場所が筋肉痛となっていた。

 字見さん、1人で歩けるのか?心配になりながら、様子を見守る。


「おーいお前ら外で騒いでないで、早くこっちにこい」


 海里さんに促され、俺たちは館内へと進んでいく。

 学生だけでこんな雰囲気のある旅館に泊まれるなんて、ちょっと贅沢すぎやしないか?


 そんなことを考えながら、館内の美しい景色を楽しんでいると、海里さんが部屋割りを説明してくれた。


「えーっと、こっちの部屋と反対側の部屋がわたしたちの部屋で、荷物も先に運んで置いてあるから」


 扉を開けると、そこには字見さんと愛羅さんの荷物が置いてあった。

 ってことは…反対側が俺の部屋か。ドアノブに手をかけたその瞬間——


「おやおや、あんたわたしの部屋で一緒に寝るつもりかい?」


「えっ、どういうことですか?」


 海里さんの発言を理解することができず、頭に?が浮かぶ。

 疲れてるのかな?俺。それとも海里さんが勘違いしているのか?


「あのー聞き間違いかもしれないので、もう一回お願いします」


「え?そんなにわたしと一緒の部屋がいいの?」


「つまり海里さんが1人部屋で、俺ら3人が相部屋ってことですか?」


「そうだけど?愛理から聞いてないの?まあ、どうしても一緒ならいいけど。でも今日は運転することないし、お酒飲むし、何しちゃうか分からないよ」


「冗談ですよね?」


「冗談に決まってるでしょ。未成年に手を出したら捕まるし」


 偶然だろうか、目が合った瞬間に舌なめずりをし、ジトっとした視線を送られる。

 海里さんが醸し出す雰囲気には、とても冗談に見えないんだが…


「まさか、もう酔っているとかじゃないですよね?」


「ないない」


「ねぇ、悠斗いつまで廊下にいるの?」


「お、おう今行く」


「次合うときは温泉かな?それとも明日かな?とりあえずじゃーねー」


 そう言って海里さんは自分の部屋に入っていった。

 海里さんの冗談はいつも際どいな…。いや、冗談で済ませるにはちょっと危険すぎる気がするんだけど。


「愛理さん聞きたいことがあるんだが」


「ん、なに?」


「どうして俺ら3人が一緒の部屋なんだ?」


「だって、海姉がだれかとペアで泊まったら、男女関係なく食われるでしょ」


 実の妹にそんなふうに思われているのか。

 ん?まて、今凄いこと言ってなかったか?


 愛羅さんがさらっと言ってのけたが、結構怖いことを言ってないか?「男女関係なく食われるでしょ」って…

 どういう意味なんだよ。さすがに深掘りするのも怖いし、聞かなかったことにしよう。


「とりあえず、今日は何も起きないことを祈るか…」


 そう思いつつ、部屋で愛羅さんと字見さんと温泉のことを話す。疲れてるし、先にご飯の前に入ろうという話に落ち着いた。愛羅さんと字見さんが先に温泉に向かい、俺は少し休憩してからいくことにした。


 数分後、温泉に向かうと「男湯」「女湯」のほかに「混浴」があるのが目に入った。


 「混浴なんて珍しいな」


 今ここに2人がいなくて助かった。ここで混浴に目を奪われていたら、『変態!!』と言われ引かれていたのに違いない。

 けど、2人はすでに女湯に入ってるし、俺が混浴に入ったところで誰にもバレないだろう…


 俺は少し迷ったが、覚悟を決めて混浴を選択することにした。


 浴室に入ると、服を脱いで露天風呂に向かう。蒸気が立ち込める中、人影が2つ見える。

 まさか…浴室はガラガラだったが人がいるのか?しかも体型的に…これは完全に女性だ!ラッキーすぎるだろ。まあ、ジロジロ見るの失礼だし普通に露天風呂を楽しもう。いるだけでラッキー!それだけで十分。


 温泉で隣に座るときとかサウナで一緒になるときって、軽く挨拶するけどこの場合も挨拶したほうがいいのかな?一応しとくか。


「うっす」


 と軽く頭を下げ挨拶すると


「やっぱり、混浴にきたじゃん!!」


 聞きなれた声で指を指される。まさか…


 ―――


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