第14話
3人でファミレスに入り、それぞれメニューを選びながら、少しずつ緊張が解けていくのを感じた。
字見さんの表情も、先ほどの出来事から少しずつ穏やかになってきているように見えた。
愛羅さんは早々に自分の注文を決め、字見さんに「何か食べたいものある?」と聞いていた。
字見さんはメニューを眺めながら、ゆっくりと選んでいた。
「んじゃ、わたしはチキンステーキにしよっかな」
「…わたしは和風ハンバーグセットで」
俺も適当に注文を済ませ、店員さんが去った後、ふと字見さんが俺に尋ねた。
「ゆ、悠斗くんと神凪さんって、どういう関係なの?」
その質問に、俺と愛羅さんは同時に顔を見合わせた。彼女が疑問を持つのも無理はない。
俺と愛羅さんが一緒にいる姿は、学校でもそう多くはないし、急に仲良くしているように見えるだろう。
「2人とも、すごく仲良さそうに見える」
字見さんは少し不安そうに見つめながら言った。
その言葉に、愛羅さんは首をかしげる。
「そっかー?」
「そこは嘘でもいいから仲いいよって言ってよ。悲しくなるから」
俺がそう言うと、愛羅さんはげらげら笑いながら返事をした。
「冗談だってば」
「余計に2人の関係性が分からなくなったよ」
字見さんが困惑した様子で呟いた。
「まあ、単純に顔見知りってだけだな」
「嘘だー!あたしら小中高とずっと学校一緒じゃん」
愛羅さんが笑いながら反論してきた。その言葉に俺は少し考え込んだ。
「そうだな…確かにずっと同じ学校だったけど、そんなに親しくしていた覚えはないんだよな」
「ずっと一緒なら幼馴染的な感じなの?」
字見さんが興味津々に聞いてきたが、俺はすぐに否定した。
「いや、そんな感じじゃないよ。ただ、存在を知っていただけで、親しい関係ではなかったんだ」
「それは悠斗が勝手に距離を取ってただけでしょ?中学のときからあまり話さなくなったし、未だに名前にさん付けで呼んでくるし」
2人のやりとみを見て字見さんはくすりと笑った。
「なんだかんだ言って、2人とも仲良しだね」
「まあ、今は同盟の関係だしな」
「わたしも、一緒の学校だったらなぁ」
字見さんはそう呟き、自分で言ったことにハッとしたよう表情になる。
「ほ、ほら!女の子同士だとゲーム友達ってなかなかできないでしょ?早くから悠斗くんと知り合えてたら、もっと楽しめたのになあって」
慌てて訂正するように言い足した。
その言葉に俺は頷きながら答えた。
「確かに、俺もゲーム友達って周りにいなかったし、オフ会しなきゃずっとネッ友だけで終わっていたかもしれないし」
「え、最初から友達じゃないの?」
愛羅さんが驚いたように声を上げる。
「うん、わたしも最初はビックリしたよ」
「何それ奇跡じゃん。運命だよこれ!」
話が盛り上がり、楽しい時間が過ぎるのはあっという間だった。
満足したころに、そろそろ会計をすることにした。
「さて、そろそろ会計するか」
俺がそう言うと、字見さんが慌てて財布を取り出そうとする。
「俺が払うから先に行ってていいよ」
俺がそう言うと、字見さんは申し訳なさそうな顔で俺を見つめる。
「いいよ悠斗くん、わたしも払うよ」
「だって今日は字見さんに元気になってもらうためだから、気にしなくていいよ」
「悠斗がそう言ってるんだし、今日は甘えちゃいなよ」
「そこまで言うなら…ありがとね、悠斗くん」
「あと愛羅さんの分も払っておくから」
「うちの分まで?マジ!?奢りあざーっす!」
愛羅さんはるんるん気分で字見さんを外へ連れて行った。
俺は彼女たちを見送り、レジに向かった。
「さて、値段は……たっか!!」
俺は提示された金額を見て驚愕した。
思ったよりも値段が高く、予想外の出費に動揺を隠しきれなかった。
「字見さんはともかく、愛羅さん…食いすぎでしょ」
俺は思わず独り言を漏らしながら、財布を開いて支払いを済ませた。
少しばかり後悔の念が頭をよぎるが、今さらどうしようもない。
出費が予想を上回ったことで、今月のゲームにかける予算が厳しくなってしまった。
しょんぼりとした気持ちで店を後にした。
待っていてくれた2人が迎えてくれ、俺が合流すると、字見さんが少し照れくさそうに話しかけてきた。
「またこうして、3人で集まって遊んでみたいな」
その言葉に、俺も愛羅さんも同意するように頷いた。
「そうだな。またみんなで遊ぼう」
「この後、どうする?うちまだ元気あるんだよね!カラオケでも行く?」
「たぶん俺が行ったらアニソンしか歌えないぞ」
「たぶん、わたしも同じだと思う」
「えーじゃあ今度にお預けってことで」
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