隣の生徒は戦闘員

【第7章：必要な休息-3】

夕暮れ時、庭では高強度のトレーニングがまだ続いており、コモドニは親父の手首をかわして、両手で首をロックして相手を動かせなくしていた。

「そうそう、手首をもっとしっかりとロックして、相手はもう逃げられないようになるんだ。」

「了解。」

「あ、あまり力を入れすぎる─コちゃん！」

「すみません！」

擬態状態のコモドニは素早く手を放し、解放された親父は汗を拭って疲れ切った笑顔を見せた。

「ふぅ...力がすごい、若者はさすがだ。気づけばもう夕暮れか。今日の時間は限られている、君に教えられることはこれだけだ。帰国後も精進し、プロレス技術を磨き続けてくれ。」

「はい、先生の教えを心に刻む！」

「最後に、これを君に贈ります。」

親父は廊下に置いてあったトラのマスクを手に取り、コモドニの前で高く掲げた。

「昔、俺が競技に参加していた頃、いつもこのフェイスマスクをつけていました。まさに俺の魂そのものと言っても過言ではありません。でも、もうこれをつける機会はないだろう。今、これは君のものだ。」

「こんな重要な贈り物、俺は受け取ることができません！」

「いいえ、君の熱いプロレスの魂を感じることができる。君はまさにプロレスのために生まれた男だ！俺の意志を継いで、戻ってプロレスを栄えさせてくれ！」

「先生！」

「コちゃん！」

二人は涙を浮かべて抱擁し、私はこの情熱を理解したくなかったので、静かに横で手伝って物をまとめました。

「練習が終わったら早くシャワー浴びてくれ、臭すぎる。」

汗だくの男たちが抱き合っている様子は、見ているだけで暑苦しく感じられる。

「ははは、これは俺たちが崇高な伝統を受け継ぐ儀式なんだ。」

この時、悠月はまるでロボットのように、硬直した動きで私の傍らに来ました。

「山、山陸、もうそろそろ行くべき。」

「なんで顔がそんなに赤いんだ、ちょっと寒いから風邪ひいたのか？」

「い、いや、大丈夫、気にしないで！」

母は手伝いながらコモドニに睨まれ、その後私に尋ねました：

「山陸、今晩も家で食べないの？」

「うん、外で済ませることになる。」

彼女は感情を表に出さずに頷き、すぐに親父に言いました。

「大石、水が用意してあるから、食事前にシャワーを浴びてきて。」

「了解、それじゃあ先に入るよ、コちゃんさようなら、元気でね。」

「はい、ありがとうございました、先生のご指導に感謝します！」

コモドニは手に持っていたトラのマスクを恭しく90度のお辞儀をした。

知り合いが自分の親父に敬礼する様子は本当に複雑な感じがする。

クッションを収納した後、私たちはストレイズ基地に向かう準備をしていたが、なぜかコモドニが何か考えごとをしているようだった。

「どうしたんだコモドニ？そろそろ行くよ。」

声をかけてもコモドニはまだその場に呆然と立っており、庭を掃いているお母さんを見つめていた。

「その横顔、どこかで見たことがあるような気がする。」

「誰のことを指しているの？」

この言葉に興味を持った私は疑問げに目を細めた。

「バイオレット前輩だ。」

「彼女を憧れていたじゃないか、本人が一目見ればわかるだろ？」

「いや、俺たちはバイオレット前輩の正体を知らないんだ、普段はいつも仮面をしているんだ。」

「血のバイオレットは何年か前にストレイズを離れたんだよな？」

コモドニは胸を抱えて考え込んだ後、あまり確定的でない答えを返した。

「それはもう19年前くらいのことだ。」

コモドニからの情報を得て、ストレイズ基地に到着した後、私は隙間を縫って電話をかけた。

「もしもし、惠さんですか？私は楊山陸、ストライスの者です。」

電話の向こうからは、惠さんの優しい声が聞こえてきた。

『何かご用でしょうか？明日の決闘はすでに承認されていますよ。』

「はい、過去の決闘記録を確認したいんです。」

『作戦名はありますか？』

「流れ星作戦。」

『その決闘は探しやすいですね、少々お待ちください...ありました、何を尋ねたいですか？』

「作戦の日付と場所を知りたいんです。」

『92年10月25日、場所は太平洋デパート双和区支店です。』

「それと、『血色のバイオレット』という人物についても調べたいんです。」

『申し訳ありませんが、血色のバイオレットに関する情報は、彼女の引退時に本人の要望に従って一括削除されました。』

「そうですか、仕方ありません。」

『ちなみに、明日の対戦場所は太平洋デパートですよ、頑張ってくださいね。』

「了解しました、ありがとうございます。」

電話を切ってポケットにしまった後、蛇口を開け、自来水が容器に向かって不規則に流れ、水の音が私の乱れた思考を洗い流していった。

19年前、親父と母が出会ったプロレスショーは、そこで開催されていた。

バイオレット色の髪。

子供のころの鞭。

親父がうっかり言ってしまった後継者。

「血色のバイオレット、どう考えても母だよ─！」

こんな浅はかで明白な事実に、なんと今まで気づかなかったんだろう。

やっぱり無意識に現実から逃げていたのか？母が悪の組織の元幹部だなんて。

「だめだ！どうしても受け入れられない！」

感情が高ぶった私は、手に持っていた野菜をうっかり握り潰してしまった。

細切りタラを口に含む影豪が、ちょうど台所に入ってきて私の状況を確認した。

「山陸、なんで野菜を洗うのにこんなに時間かけてるんだ？それに野菜をなぜあんなに握りつぶすんだ？」

複雑な気持ちでため息をつきながら、冷静に答える。

「大きすぎて、小さくちぎってもいいかなって思って。外でガスコンロは用意した？」

「うん、でもガスがなくなって、コモドニたちが買いに行ったばかりだよ。」

「ところで、新しい問題集持ってきたよ、帰る前に少なくとも半分はやらないと寝かせてもらえないから。」

「お前、だんだん母さんみたいになってきたな。」

「くそっ、母のこと言うなあああ！！」

「あ、野菜がもっと潰れてるぞ。」