隣の生徒は戦闘員

【第6章：嵐前の静けさ-1】

ストレイズ基地の目かくしフェンス外で、白悠月は行ったり来たりしています。

「ううう、中に入りたい！でも理由が見つからない！明日は模擬試験だし、私、ここでなにしてるんだろう…模擬試験？そうだ！周影豪って馬鹿、彼に英語を教えないと、山陸は一人じゃ対処できないわ。」

やっと口実を見つけたゆう悠月は笑顔で満ち、ストレイズ基地を訪れる準備をしています。

「このお嬢さん、お尋ねですが、あなたはストレイズの人ですか？」

話しかけられた悠月は振り返り、相手の顔には髭が生え、膨らんだお腹が存在感を示している、元気なおじさんです。

彼女にゆっくり歩いてくる中年の男性、背後には見るからに元気がなく、歩きながらあくびをする赤毛の青年が続いています。

「ロールスロイス？だいたいここのメンバーだろうね。」

悠月は急いで頭の中の記憶を検索し、昨日は確かに鉄皮の家の中でそのような用語を聞いたことを思い出します。

「お会いできて嬉しい、私は五色戦隊の隊長、便黃色です。」

黃隊長は友好的な右手を差し出しました。この人が便を言ったので、悠月はあまり彼と握手したくなかったが、礼儀として手を差し伸べた

「…こんにちは。」

赤いTシャツを着た青年は二人の会話を無視し、勝手に敵対組織の基地に入っていきます。

「待って、陽一！」

黃隊長は阻止しようとしますが、もう手遅れでした。

「基地に侵入するとは、勇気あるなぁ痛い痛い！」

地面に座って脚を広げて筋を伸ばしていたコモドニはすぐに立ち上がりますが、足は痛くてまっすぐに立てません。

「どうした、俺を見て怖くて足がガクガクになったのか？？」

「「冗談はやめて、これを食らえ！イカ蹴り！」」

木の柱に片足で立つイカ怪が跳び上がり、陽一の方向にキックを繰り出しました。

陽一は色を変えずに前に大きく一歩踏み出し、イカ怪が蹴り出した左足を横から抱え、巧みに一回転して相手を投げ飛ばしました。

「触手受身！」

地面に落ちそうなイカ怪は、空中で巧妙に体をねじり、8本の触手が風車のように回転し、着地の衝撃を完璧に緩和しました。

このすごい技術を見て、陽一は口笛を吹きました。

「こっち見てくれ、竜の爪！」

今回、怪人の攻撃を阻止するために前進したのは、隊長の黃曉明でした。彼はコモドニと角力を繰り広げながら、相手に謝罪しました。

「すまない！無断で入ってきてしまった。私の顔のために、若者を許してもらえませんか？」

二人は同時に力を抜き、会話に適した距離まで後退しました。

「なんでだよ、いきなり喧嘩になるの！？」

戸惑った悠月は、そばで愕然として立っていました。

「外がどうなっているの…状況を調査しに来たの？」

ドアを開けて外を覗いた山陸は、1秒で状況を把握しました。

黃曉明は爽やかな笑顔を見せ、横に立つ陽一の背中をぐっと叩きました。

「いやいや、配達に行く途中にここの前を通りかかったので、ご挨拶に伺いました。」

「そうか、それなら二人は満足のいく情報を手に入れたのか？」

「もちろん、君たちの闘志を見て、とても満足しているよ。陽一、行こう！」

二人が去った後、イカ怪は怒って足を地面に踏みしめ、コモドニも憤慨して拳を握り締めました。

「この野郎、ここで騒ぎを起こしては走るんだ！」

「くそっ、次に会ったら必ず倍返ししてやる。」

基地の近くにいる小さなトラックのそばで、敵の情報を調査した2人のヒーローは、車体に寄りかかって少し休憩していました。

黃曉明はポケットからタバコとライターを取り出し、陽一の前差し出しました。

「タバコ、吸う？」

「やめたんだ、琳が嫌いだから。」

黃曉明はがタバコに火をつけた後、ライターをポケットにしまい、気持ちよさそうに白い煙を吐いた。

後輩の微妙な表情の変化に気づいた彼は、横顔で訊ねました。

「陽一、なんだか嬉しそうだな？」

「こんなに久しぶりに熱血が沸騰している。あのイカは昔なら絶対にあんなに器用な動きはできなかった。さっきの角力、なんと相手に押し込まれるとはな、お前も中年で体力が衰えたのか。」

「それは戦闘服を洗濯中だったからさ、今日は身に着けていないんだ。そうでなければ、どうして俺がお前を助手に選ぶことができただろう？」

陽一は驚きの表情で目を見開きました。戦闘服を着ていない状態で、この世で誰かが怪人と手を角力をすることができるとは思ってもみなかったのです。

「…人間としては、お前も怪物だ。」

「ハハハ！褒めてくれても、給料は増えないぞ。」

2人は再びストレイズの方を見つめ、嵐の前の静けさを楽しんでいました。

「フランスの英雄ナポレオンは怪人連合軍に敗れ、最後はどの島に追放され、余生を過ごしたか？」

「セントヘレナ島。」

「ヒーローの装備が手工業から機械生産に転換された、この急激な進歩を遂げた産業革命は、何世紀に起こったか？」

「18世紀中頃、1769年に狂気の科学者ワットが蒸気機関を改良し、その技術がイギリスからヨーロッパに輸入された。」

「悪しき統治者慈禧太后に庇護された清末の仇洋運動により、八カ国がヒーロー連合軍を結成した事件は？」

「義和団の乱。その後、辛丑条約を締結せざるを得ず、外国のヒーローたちは中国の首都や各重要拠点に駐屯することが許され、これが1937年の盧溝橋事件の原因となった。」

答えを確認した後、微笑みながら眼鏡を整え、自分の教育手腕に感心してしまう。

「20問全て正解、やはり私は天才だな。」

「褒めるべきは答えを出す俺の才能でしょう？」

「方法は私が考えたものだ、さあ、お前の餃子を食べろ。」

「今回はたくさんのソースをかけなくて済みそうだ！」

20個の餃子を獲得し成功に泣き喜ぶ影豪。お腹は空いているが、がつがつ食べるつもりはなく、ゆっくりと勝利の味わいを楽しんでいた。

テーブルの一角で試合を見守っていた悠月が、思わず口に出して文句を言った。

「何か変わった教育方法だ、歴史がかなり奇妙な方向に歪んでいるわ…」

「これは影豪が歴史を好きになるためのものだ。昨夜通霄が教科書を改変した甲斐があったようだ。でも他の科目はこのようにはできない、午後の英語はお前に任せるよ。」

「ああ、任せておいて。」

私は悠月の横顔を余目で窺いながら、ひそかにため息をついた。

「それ、えっと、これ…」

「なんだ？ぐずぐず言わないで、何か言いたいことがあるなら早く言え。」

言いたいことを迷っている私が、最終的に覚悟を決め、悠月に向き直って言った：

「ごめん、やっと思い出したんだ─子供の頃のことについて。」

私がそう言うと、驚いたように立ち止まる悠月の表情が、わずかに明るくなった。

「…一生忘れるかと思った。」

「私たちは公園で罠を掘って、くそがきたちを引っ張り込んで、一日中閉じ込めたことがあった。彼らは帰宅して親に訴えたが、母はその事実を知り、どこからか鞭を取り出して私を叩き、しばらくお尻が座れなくなった。」

「おばさんってそんなに冷酷だったんだ、全然知らなかった。」

「私が忘れてしまったのは、あなたが家を出て翌日のこと。その厳しい罰を受けた後、心配してあなたが帰宅したら迷惑がかかるだろうと思い、全て私が一人でやったことにして、その後家ではあなたの名前を口にしないようにし、結局それが事実だったかのように忘れてしまった。」

日記に黒塗りされた名前が悠月であることは、その出来事のせいで、私が母に迎合し、優等生の役割を演じ始め、彼女の注意をそらすために始めたことだった。

「なるほど…私、そんなことを言うと思ってた？」

謝罪の意を示すために、私は手を合わせて頭を深く下げた。

「ごめん！あなたのことを完全に忘れてしまって、一人で抱え込むべきじゃなかった！」

低い視線を上げると、唇を一本線に結んだ悠月が、どのように反応すべきかを考えているように見え、最終的には微笑みを浮かべることを我慢できずにいた。

「思い出してくれて嬉しいわ、でも仕方ないでしょ、こんな昔のこと、本当に忘れても仕方ないことなんだから。」

「それって、私を許してくれるってこと？」

「うん、とりあえず許してあげる。」

「とりあえずって何だよ。」

前嫌いが解け、私たちは微笑みながらお互いを見つめ、温かい雰囲気が一瞬で部屋いっぱいに広がり、隣で不快な咀嚼音が聞こえるまで続いた。

「あなたたち、もぐもぐ…それにしても、おしゃべりも、もぐもぐ… いつまでですか？お茶でも注ぎますか？」

私と悠月は同時に影豪の顔を指差し、口ごもりながら言った。

「「黙ってあなたの餃子を食べなさい！」」