隣の生徒は戦闘員

【第4章：ヒーロー協会-6】

「…ずっと待っていたんだ。」

ヒーロー協会から鉄皮屋の基地に帰ると、扉を開けるなり、馴染みのある弱々しい姿が目に入った。

ゆるい服を着たやせた男性、それが影豪の叔父さんであり、同時にストレイズの実質的なリーダーである周覺欣だった。

「影豪はどこにいる？」

おかしい、覺欣さんの顔に笑顔はなく、横でひざまずいているコモドニとイカ怪、表情がとても緊張しています。

「分かりません。昨日から彼との連絡が途絶えています。」

私は嘘をついていなかった。影豪はその時から音信不通だった。

「そうか、それならここにいる必要もありません。ありがとう。」

「何があったのですか、覺欣。」

同様に状況を理解できない甲殼じじは、心配そうに尋ねました。

去っていく覺欣は足を止め、悲しい表情を浮かべて振り返りました。

「あの子、兄をだましてだけでなく、私をだましました。」

コモドニはひそかに私たちに近づいてきて、静かに説明しました。

「影豪は、父親にここに来たことを秘密にしていたようです。問題が発覚してから二人はけんかをし、昨夜家を出て行きました...」

なるほど、だからあいつは一日中連絡が取れなかったわけだ。

「何か情報があれば連絡してくれ、私は戻る。もしかしたら、こっちにくるかもしれない。」

重苦しい表情の覺欣は扉を閉めて去っていき、林愛紗は彼が遠くに行ったことを確認してから、私の後ろから出てきて、緩和された雰囲気の中で尋ねました。

「...周影豪が皆をだましたって、どういう意味？」

雰囲気も和らいでいるイカ怪は、直接地面に崩れ落ちながら答えました。

「知らないよ、影豪のお父さんと覺欣先生の関係が悪いんだ、彼ら二人の間に立つ影豪、おそらく何か悪いことをしたんだろう。。」

信じられない、こういう時に影豪がこんな騒ぎを起こすなんて。

私はコモドニに餃子を手渡し、携帯電話を取り出して時間を確認しました。

「もう5時を過ぎてる。もし影豪がここに来ないなら、この時間帯でしかいるはずがない。」

「楊山陸、どこに行くつもり？」

ドアを閉める前に、私は林愛紗に肯定的な表情を送りました。

「もちろんあいつと私が宿命の対決を行う場所だ。」

休日にはゲームセンターはほぼ満席となり、この眩しい場所はさらに活気を増します。

体感バイクのレースゲームエリアを避け、知られた対戦格闘ゲームエリアに来て、ついに馴染みのある姿を見つけた。

「くそ！この野郎、かかってこい！」

怒り狂う影豪は荒っぽくボタンを叩き、近くの店員に注目されるが、幸いにも対戦相手が致命的な一撃を与え、影豪は驚きで動作を止めた。

画面上の獰猛な虎の怪物がスローモーションで倒れ、対戦相手の女騎士は喜びと歓声で飛び跳ねた。

「くそ、本当に怪人に勝てないのか！」

「単調な操作方法では、どんなに強力なキャラクターも無力だ。」

「山、山陸！なぜここにいるの？」

影豪はびっくりして私を見つめ、視線が交差し、再び恥じ入って目をそらした。

「あなたは、俺の父親のことを知っている...」

「そっちで話そう。」

エレベーターの前に自動販売機を置いた休憩エリアがちょうどあり、彼はふさふさと店の外に歩いて出て、ベンチに座り込んで黙っていた。

私は缶コーラを買って彼に手渡し、自分は隣に座りました。

「なぜ家出したの？」

「...父親と喧嘩したから。」

影豪はつぶやくように言葉をつぶり出し、高校生にもかかわらず家出したことに恥ずかしさを感じているようでした。

「理由は？」

「ストレイズのことが彼にバレたから。」

「父親は参加を許可しないのか？」

「それについては長い話だけど、まず座ってくれ。」

「もう座ってるよ、早く話せ。」

今日はもういくつかの話を聞いているし、もう一つ聞いてもかまわない。

彼は陰気な顔を上げ、両手を胸に抱えて語り始めました。

「俺たちの一族は代々、怪人に関連した仕事をしてきました。」

「信じられないね、それならあなたは怪人の末裔と言った方がまし。」

「まあまあ！少なくとも俺の祖父の世代から始まったこと、政府がサイエンスパークを設立する際に、怪人の研究と育成も行われたこと、それは真実だよ。」

「だから、あなたとは何の関係があるの？怪人の歴史には興味がない、要点を教えてくれ。」

「ちょっと我慢してくれよ。もうすぐ重要な部分になるからさ。怪人の研究を担当していた祖父は、この仕事を息子に継がせるつもりだった。しかし、俺の父親はこの仕事が光明正大なものではないと考え、断固拒否し、最終的には怪人を愛する叔父さんが後を引き継ぐことになった。」

「小さいころ、父親は初めて俺を叔父さんの家に連れて行った。その時、俺は特撮ヒーローシリーズが大好きで、多彩なコレクションを見て、喜びで手を振っていた。」

「その後、休日ごとに叔父さんの家に行くようになり、成長するにつれてますます魅了され、特撮写真集を叔父さんの家で楽しむことが日常になっていった。」

「叔父の家に一日中行き来するので、父は俺が将来彼と同じようになるのではないかと心配し、そのために叔父さんとわざと距離を置き、悪い興味に溺れないように戒めました。叔父さんも父の意図を理解し、徐々に俺の訪問を歓迎しなくなった。」

「高校に入学して以降、両家はあまり交流がありませんでしたが、この道を諦めたくないので、毎月家に内緒で、理由をつけて叔父さんの元に忍び込みます。」

「叔父さんが病気に倒れ、ストレイズが解散することになるという情報を聞いたとき、俺は父親に隠れて叔父さんを欺き、この重責を引き受けて戦闘員になることを決意しました。

状況が悲しくなると、影豪の表情は再び重い影で覆われました。」

「しかし、紙は火を包みこむことはできません。おそらく、最近、傷だらけで家に帰ることが多かったことに気づいた父親は、昨日ついに─」

「つい、ついに？」

私は我慢できずに唾を飲み込み、息を呑んで事の経過を聞く準備をしました。

「ついに、洗濯機を開けた。」

「...え？」

私の思考は完全に停止し、半開きの口を閉じるのを忘れました。

「彼は洗濯機の中で、俺の戦闘服を発見したんだ。」

「馬鹿なのか！なぜ自宅の洗濯機を使ったんだ！？」

ついにこの人がどれほど愚かかを理解し、抑えきれない怒りが湧き起こった。

戦闘服は洗濯機で洗えるのか？私のはまだ洗ってない。

「最も危険な場所が最も安全だと思っていました。父親は洗濯機を使わないし、母親も俺のために口を封じると言っていました。こんな手段を使ってくるとは、卑劣すぎる！」

「明らかにお前が馬鹿だろう、むしろ今まで気づかれてなかったのは奇跡だ！」

「昨日、俺は父親に正直で、今後関連する仕事をしたいと言いました。彼は俺が勉強を怠けるのに時間を浪費すると非難し、自分のことをうまくできないのに他のことに干渉し、俺のような半端者の態度では、将来、この仕事に入っても成功しないだろうと言いました。最後には叔父に電話をかけ、どうしたらいいか分からなくなりました...」

「あなたのお父さんの言ったことがかなり納得しています。」

「裏切り者！あなたも父親の側につくのか！」

怒った影豪はアルミ缶を力強くつぶし、まだ開けていないコーラが変形してしまった。

「あなたは授業中に寝ているのは事実だ。」

「ええ…ちょっとだけは影響があるかも。」

ちょっとだけじゃない、まだけがれのことも考慮に入れていないんだ。

「でもこれで事は簡単、逆に言えばお父さんを認めさせればいいだけだ。」

「なぜ突然不可解な寒気を感じるのだろう？」

「とても簡単だよ、模擬試験でいい成績を取り、それで彼を説得すればいいんだ。」

「できない、あまりにも難しすぎる。」

「それなら諦めろ、最後の戦いはもう終わったんだろ？」

「それはいけない！戦いが終わったとしても、俺はストレイズを最後の瞬間まで見届けなければならない！」

影豪の堅固な眼差しは一切の曖昧さを見せず、その情熱が本物であることがわかる。

「そんな気勢があるなら、しっかり頑張って、お前のお父さんを黙らせてやれ。」

「だから、無理だよ、あと2日で模擬試験だよ！」

強い信念はすぐに打ち砕かれ、この人は一体どれだけ勉強を嫌っているのか？

「あなたの情熱はこれだけのものなのか？残り2日じゃなくて、あと2日あるんだよ。より正確に計算すれば、明日の0時から試験が始まるまで56時間ある。絶対に不可能なことじゃないよ。」

「...山陸、本気なのか？」

「ずっと本気だよ。」

親友は全力で助けてくれるという。影豪は諦めたかのようにため息をつき、背筋を伸ばして立ち上がった。

「よし！今すぐ父親に決意を示しに行く。あなたの言うとおりだ！」

彼は一気に缶の炭酸飲料を開け、黒褐色の液体が一瞬で噴き出した。

「くそ、なぜ噴き出すんだ！？」

「さっきあんなに興奮したからだよ、馬鹿、こっちに向かって撒かないでくれよ！」