41 とても簡単な言葉②
そして、あの日の夜。青柳さんから連絡が来た。
ベッドでじっと青柳さんのラ〇ンを見ていたけど、俺はそのラ〇ンより他の何かに気を取られていた。あの時、美波に言われたことをずっと気にしていたのも事実だけど、そんなことより相手が何を考えているのか、それが一番難しかった。
だとしても、好きという感情は変わらないのにな。
どこから始まればいいのか分からない。
すると、青柳さんから電話がかかってきた。
このタイミングで……?
「は、はい! 小春さん……」
「こんな時間に電話かけてごめんね……。でも、声が聞きたくてぇ…………」
まあ、大学生はまだ夏休みが終わってないからいいかもしれないけど、俺……ちょうど今寝ようとしたのにぃ。それに、いろいろ考えたいこともあるし。
とはいえ、青柳さんの連絡を無視できない俺だった。
「はい。少しならできます! 明日学校あるんで」
「う、うん! ねえ、千春くん」
「はい?」
「私はね……! ううん……、昔からずっと消極的な性格だったからね!」
「はい……」
「だから、他人に何かを頼まれると……はっきりと断るのができない超面倒臭い性格なの」
「はい…………」
「変な人に声かけられたらね! その……はっきりと断れないし! そして、変な人に告られた時もはっきりと断れない面倒臭い人だから……」
「は、はい……」
どうして、いきなりこんなことを話すんだろう。
別に青柳さんのことを面倒臭いって考えたことないし、自分のことをそんな風に貶すのはよくないと思う。
「美波がいなかったら、私……きっと変な人と付き合ってそのまま結婚して……、全然楽しくない人生を過ごしたかもしれない……」
「いいえ、それは……」
「わ、私が言いたいのはね! その……、私のことをもっと大切にしてほしい……っていうか…………」
「…………」
電話中なのに、青柳さんの震えている声が聞こえてきた。
なんか、緊張してるような気がするけど……。「大切にしてほしい」は……、どういう意味だろうな。もしかして、美波と話したことを青柳さんも知っていたり……? そんなことないだろ。
いや、美波ならすぐ青柳さんに話しそうだ。全然信頼できないからさ。
「小春さんは……その……」
もし、全部知っているなら……。俺はここで言うべきだよな?
今まで我慢していた気持ちを青柳さんに伝えるべき……。とはいえ、全然出てこないんだけど……、どうしたらいいんだ。こういうのは普通男の方から言うことだと思うけど、実際青柳さんにそれを言うタイミングが来ても上手く言えない俺だった。
「うん!」
めっちゃ大きい声で答えてるしぃ!
でも、今じゃないと俺はそう思った。告白をするなら……、電話じゃなくて、青柳さんの前で言うべきだと思う。堂々と「付き合ってください!」って、青柳さんの前で言うんだ!
青柳さんの方から、大切にしてほしいって言ってたし。
俺も、もうこの気持ちを我慢できないからさ。はっきり言っておこう、振られたら仕方がないこと! でも、後悔はしない。
「…………」
「あ、あの! 小春さん! 明日……、予定ありますか?」
「明日? ないよ!」
「じゃあ、小春さんの家に行ってもいいですか? 学校終わってすぐそっち行きますからわざわざ迎えにこなくてもいいです!」
「うん! な、何しようかな!? 一緒に映画観る?」
「はい! 一緒に映画を観て、美味しいのを食べましょう! 行く時にお菓子とかたくさん買っていきますからね」
「うん! 私も! スーパーに行ってくるから!」
「はい! そ、そして……」
「うん」
「大事な話がありますから……、とにかく明日は……何があっても小春さんの家に行きます! そこで待ってください」
「わ、分かった……!」
その後、すぐ電話を切ったけど、なんかすごいのを言い出したような気がする。
最後の……「大事な話」とか、言わなくてもいいことだと思うけど、なんで俺は青柳さんにそんなことを言ったんだろうな。
馬鹿馬鹿しい、電話を切った後にそれを思い出してどうするんだよ。
「寝よう……」
(小春)明日、また会えるね〜。嬉しい♡。
やべぇ……、ハートまで送った…………。
(千春)はい! 俺も嬉しいです!
(小春)あ、そうだ。千春くん、食べたい料理ある? 教えてくれたら明日作っておくからね!
(千春)俺、特に食べたい料理とか……、考えたことないんですけどぉ。
(小春)なんでもいいよ! 好きな食べ物!
(千春)じゃあ、俺! 小春さんの好きな料理でお願いします!
(小春)それでいいの?
(千春)はい!
(小春)えへへっ、明日! うちに泊まって! どうせ、学校に行くんでしょ?
(千春)い、いいですか? でも、やっぱり……。
(小春)いいよ! 私も一緒にいたいからね! 気にしないで!
(千春)はい!
(小春)それでね! 映画は———。
この流れ……、よくない。
よくない……。
……
そして、翌日の朝。
「あ……」
まずい……、遅刻だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます