レッコクシ~戦乱が続く烈国大陸に平和をもたらすべく立身出世する少年の物語

座月

第1章 お転婆令嬢との出会い

第1話 燃える故郷、宿る決意

走る。走る。走る。






僕は暗闇の森の中を、全速力で駆けている。




時刻は夜中、月の明かりもそれほどないが、明かりには困らない。




なぜなら僕の背中には、煌々と夜を照らす残酷な巨大な炎があるからだ。




今日はいつもの1日だった。




朝起きて、午前は家の畑の水やりを手伝い、昼からは友と丘でチャンバラごっこで遊び、家で家庭教師に烈国史を学び、夕方に父と母と共に食卓を囲んでいた。




それが今はどうだ。




畑は踏み荒らされ、丘には帝国の旗が靡き、建物は煌々と燃えている。




「隣町のキンサイへ逃げなさい。そして役場に勤めているフーリンを頼るんだ。フーリンはパパのお友達でね。きっと助けてくれる。フーリンには祖父に手紙を出すよう頼むんだ。きっと祖父が迎えに来てくれる」




喧噪騒めく故郷の町で、父と最後に交わした言葉だ。




母は警鐘がなるや否や家を飛び出したので、言葉を交わす間もなく別れてしまった。




自警団に所属する父と母は住人を逃がすため、僕一人を森に逃がして、町に残った。






あまりの事態に9歳の僕には、ただただ頷いて父の言う通りにするしかなかった。




隣町キンサイへはいつもなら街道で西へ向かえば、今街道を辿ると帝国の兵士と鉢合わせするかもしれないから街道は使えず、森を突っ切るしかない。




街道を使えば子供の足でも通常2時間ほどで着くが、森なら4時間はかかる。






それでも今は森を駆けるしかない。生きるために。




どうしてこうなった。




どうすればよかったのか。




そんなことは子供の僕には分からない。




ただ一つは僕は心に決めた。




「ぼくが……こんなことがないようにしてやる………!」




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