第15話
さて、今日は土曜日。黒宮の門限まで時間はたっぷりある。黒宮か・・・門限もそうだけど問題はDVだよなあ。児童相談所に電話とかやりようは無くはないけど、あいつ自身が嫌がるだろうしなあ・・・他人の俺にはあんまり手出し出来ないからな。俺に出来るのは黒宮を鍛えて立派な陰陽師にすることだけだ。今はそれを頑張るしかない。
そういうわけで、今日から修行を開始するんだが、修行にあたって問題だったのが場所だった。現実世界だと霊力が薄すぎて話にならない。だから異世界でやるしかないんだが、合流の問題がある。陰陽師の当主は自由に出入り出来るが俺はそうはいかない。今の黒宮の力で異世界と行き来出来るのは2人まで位らしく、それで異世界に連れてこられた被害者を助けて元の世界に返すわけだ。当然俺も入れるが、それではいけない。ちゃんと次元門から入って出ていかないと。データに残るしな。
なので、どうするかというと黒宮が市役所の近くで異世界に行くことで解決する。次元門の先は必ず同じ場所に出る。それは陰陽師も同じだったようで、同じ場所で何回も次元の穴を開けたり閉めたりしても常に異世界の同じ場所に出るらしい。なので市役所近くの人気の無い場所から異世界に行ってもらい、俺が直ぐに異世界で辺りを探して合流するという流れだ。
市役所のエレベーター前で黒宮と連絡を取る。向こうの準備も万全みたいだ。メッセージを確認して地下の次元門に行く。次元門のある転送室では一人の科学者の女性が作業していた。
「森島さん。今、これ使っても大丈夫っすか」
彼女は森島香苗、23歳で俺の一つ年上の先輩だ。
「う、うん。軽く点検してただけだから・・・」
「じゃあ使わせてもらいます」
彼女はいつもオドオドしている。まあ、トップがあれだからな・・・ネガティブになるのも頷ける。それにここは地下、陽の光が届かない場所だ。ずっとここにいたら暗くなるのも仕方ないのかもしれない。
次元を渡り異世界へ赴く。まずは黒宮を探さないとな。俺は次元門の周辺を走って探すが見当たらない。霊力を探ってみるとかなり離れたところに反応があった。その場にいろって話してあるから黒宮は動いてはいないはずなんだけど・・・
とりあえず黒宮は発見したので全力ダッシュで黒宮の元へ向かう。
「待たせたな。もっと近くに転送されると思ったんだけど遠かったみたいだ」
「あの、本当にやるんですか?その、修行?を」
黒宮は納得のいってないような怪訝な顔をしている。
「当たり前だ。黒宮も強くなりたいんだろ?」
「それは、そうですが・・・退魔士が陰陽師に特訓をつけるなんて事が出来るのですか?」
「そこからか・・・」
どうやら黒宮は、退魔士についてあんまり知らないらしい。これも教える人が居なかったら確かにわからないかもな。多分だけど祖父母には打倒すべき敵の組織とでも教えられているのかもしれん。
「よし、分かった!今日は初日だし、座学から始めよう」
そう言って俺は座り込んだ。
まあ、元々今日のメインはお互いの持ってる情報の交換だったからな。最初に少し実力をみてからの話だったけど。
「座学ですか?」
「まあ、要は退魔士はこんな存在で、陰陽師はこんな存在だとか」
「なるほど?」
黒宮が顎に手をあて小首を傾げる。すんません。自分でも説明下手なのは分かってるんです。
「・・・・」
「何か言いたそうだな」
「はい。1つ気になったのですが・・・」
「なんだ?」
「座学でしたらあちらの世界でも出来るのでは?」
「・・・・」
それもそうだ!別にこっち来ること無かったじゃん!確かに最初に予定では実力を見ようと思っていたけど、変更した時点で帰れば良かったじゃん!!何どっかり座り込んでんだ俺は!・・・いや待て、指摘されて帰るのは格好がつかない。なら敢えて居座るべきだ。
「それはだな・・・会話をしてる最中にも回りに注意を配る修行も兼ねてるんだ」
「そうだったのですか!私は気付かずに・・・」
乗り切ったか。よかったよかった。でも黒宮に関してはその騙され易さで大丈夫か?と不安になった。
「気にすんな。それより座学、始めるぞ」
俺も陰陽師についてそこまで詳しい訳じゃないからな。丁度いい機会だ。
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