第9話

「いない。何処にも。全っ然いない!!」


あれから3週間ほど、街と異世界を探しまくったが黒宮は影も形もなかった。探し方が悪いのは分かってる。それでも自分の足で探したかった。朝ごはんに米と卵焼き、ウインナー、味噌汁を食べつつ今日の作戦を練る。まあ作戦と呼べるものでもないが。そうだな・・・今日は趣向を変えてみよう。駅前で聞き込みをしてみるか。・・・一応話しかけるのは男だけにしとこう。



というわけでやって来た駅前、時刻は午後5時過ぎ。午前中は市役所で判子を押して過ごし、午後に異世界で魔物討伐。そして今、学生が来るであろう時間帯を見計らって駅に来た。予想通り駅前はそれなりに人は多く、制服を着た学生も散見される。俺は片っ端から声を掛けた。黒宮涼華を探してるんだ、という風に。反応は無視、ヤバい奴だと感じてさっさと立ち去る。知らないと素直に答えてくれる。この3つだった。割合は3:4:2くらい。割合がおかしい?残りの一割はスマホ構えて煽ってきたりしたバッドボーイ君だったので除外したんです。でも意外と答えてくれてた人も多かったな。もっと少ないもんだと思っていたが。まあ何にせよ、今日は情報を得られなかったが続けていけばその内知っている人物にあたるかもしれない。ということで今日は解散!!





という風にはいかなかったんですね、これが。俺はまたもや警察に職質を受けていた。その警察官の中にはこの前会った警察官もいた。


「通報を受けて来てみれば、また君かあ・・・」

「あの、今回は何のご用件で?」


今日の俺に死角はないはずだ。同じ女子に聞く方が当たりを引きやすいと思ったがそれを避けた今日の俺には。


「黒宮涼華を探してる、とかいう訳分からない言葉を発しながら学生に声を掛けるという事案かな」

「俺は男にしか声を掛けませんでしたよ!?」

「うん、まあ、とは言っても未成年にも声を掛けたでしょ。それはダメだねー」

「そんな・・・馬鹿な・・・」


事案の被害者は女性だけじゃない。男性も被害者になるんだ。初耳だ。でもよく考えれば不審者相手に男も女もないよな。俺って超浅はか!


「今日は厳重注意だけだから。次気を付けてねー」


警察はそう言い残し去っていった。にしても探してるって言っただけで通報されるのか。人相の問題か?それとも必死さ?でも我が子を探すお母さんとかは通報されないしむしろ手伝ってくれたりする場合もあるしな・・・。うーん分からん。分からんからこの作戦は中止!今日も何も進展なかったなと俺はトボトボ歩いて数秒後、後ろから声を掛けられる。


「あの・・・これ落としましたよ」


一人の男子学生が俺の落とした財布を拾ってくれたようだ。制服を着ているから高校生かな。親切な少年だ。えーと、不審にならないように笑顔で会話だ!


「ありがとう。君が拾ってくれなかったら大変なことになってたよ」

「いえ、俺は別に・・・」

「ちょっと待って」


会釈して帰ろうとする高校生を制止する。


「えーと、何ですか?」

「黒宮を探してるんだが、知っているかな?」


この親切な少年なら答えてくれるかもしれない。これで最後にしよう。そんな淡い期待と体の言い、言い訳を並べながら少年の回答を待つ。


「・・・・」


これはビンゴだな。知っている反応だ。


「時間大丈夫か?大丈夫ならファミレスでも行こうぜ。財布の礼に奢るから」

「時間は、大丈夫です」


少年は俺を警戒している。そりゃそうだ。まあ、もう教えてもらう必要は無いが通報されたら厄介だし、警戒を解いておこう。もしかしたら協力者になってくれるかもしれないし。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る